ヨーク

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章のヨークのネタバレレビュー・内容・結末

2.3

このレビューはネタバレを含みます

前章に続いての『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』でしたが、いやー! ダメだったなこれは! この感想文はおそらく結構ボロクソに文句を書くと思うので本作が大好きで最高の映画だった! と思う人はここら辺でお帰りいただいた方がよいかと思います。
ちなみに前章の方はスコアも3.8で中々の高評価だったし実際後編に期待してしまうくらいには面白かったのだが、まぁ率直に言うと見事に期待外れだったわけだ。前章の感想文中では「イメージだけで毛嫌いしていたけど、俺浅野いにおくんのこと勘違いしてたかもしれへんな…」とまで言っていて結構お気に入りだったのである。もちろん後編を観るまで最終的な評価はできない、ということも書いているのだが、しかしこうも急転直下で評価が下がるとは思っていなかった。やっぱダメじゃねーか! 浅野いにお! 何となくイメージだけで忌避していた俺正しかったよ! と恐らく考え得る限り最悪に評価を落とした後編だったのである。シリーズもので完結編が尻すぼみになるというのはまぁ映画以外でもよくあることではあるが、しかし今回のガッカリ感は酷かったなぁ…。そこには今まで食わず嫌いしてた漫画家による原作の映画の前編が思った以上によくて実際の作品の出来以上に面白く感じてしまったという心理もあるかもしれないが、でも前編は青春映画としてもSF映画としてもいい感じに風呂敷を広げてたんですよね。でもそれをキレイに畳むことは全然出来ていなかったなぁとなる後編なのでした。
ちなみに俺は原作漫画は一切読んでいないし、他の人の感想などもほとんど目を通していないので今回の前後編の映画がどれくらい原作漫画から改変されているかとかは知らない。当たり前だが映画化されるにあたって多少の再構成やカットシーンなんかはあるだろう。もしかしたらオチがまるっと映画版オリジナルになっている可能性もある。なので今回の映画版だけを観て「やっぱ浅野いにおダメだわー! 合わんわー!」と言ってしまうのもいささか早計なのかもしれないが、それはそれとしてじゃあこの映画を観た上で原作も読んでみようか、というような気持ちには一切全く一ミリもならない後編だったので、まぁ多分俺が今後浅野いにおを再評価することはそうそうないのではないかなと思う。やっぱつまんなかったわ。一言で言うと幼稚な物語でしたね。
いやだってね、前編の感想文から引用するけどね、後編への期待と予想を書いてた箇所で「本作の中盤から後半にかけて描かれた過去編が現在とどう繋がるのかが気になるな。あれどう見てもストレートには繋がらないだろうから、そこにどういうアイデアがあるのかに期待したい。先に書いておくとパラレルワールドだったらかなりがっかりする。ループものだったらもっとがっかりする。ま、でもそこは後編の楽しみなので素直に期待しておきましょう」とか言ってんですよ、一カ月前の俺は。笑うしかないだろこんなの。ガッカリとか呆れるとかも通り越して笑っちゃったよ。
モロに!! パラレルワールドで!! ループものじゃねぇか!!!
なんだよそのつまんねー展開はよ。飽きるほど観たわそんなの。そんなクソありきたりな既視感しかないようなネタの漫画をわざわざ前後編にして映画化すんなよって話ですよ。ちょっと長めの130~140分くらいで1本の映画としてまとめてくれたら、まぁ特筆するほどじゃないけどそこそこ面白かったかなくらいの感想になったと思うのだがこんなもん二回に分けてやるほどのお話しじゃないって。
そもそも俺は時間を遡行する作品で、主人公が自分の都合で失敗や過ちを帳消しにするために過去に行ってやり直す、というタイプの作品が死ぬほど嫌いなんですよ。そこは作品の出来の善し悪しではなく俺の個人的な思想ということではあるのだが、とにかく嫌いなんですよ。だってそれは明日がどうなるか分からないけど少しでも良い明日にしようと頑張っている全ての人への冒涜であり人生や、もっと大げさに言えば生まれてきたことそのものをも否定してしまう行いだと思うからなんですよね。本作でパロディとして引用されているイソベやんは明らかに『ドラえもん』がモデルなのだが、コイツ(浅野いにおのことね)マジで『ドラえもん』読んだことあんのか? とさえ思ってしまった。少なくとも大長編の『ドラえもん』では基本的に過去を改変してしまうことは悪側がやることであり、のび太たち主人公側はその過去の改変を是正するために行動するというものが基本的なスタンスであった。言うまでもないが最近ネトフリでアニメ化されたF先生原作の『T・Pぼん』もその立ち位置の作品である。要は自分の個人的な願いのために過去を改変するということは到底許されることではない、というのが時間遡行SFにおける俺の考えなわけだ。ただ、過去を改変する当人がそのことの罪深さとそれによって自分の守りたいものは守れるがそれ以外のものは傷つくという可能性も考慮したうえで、要は自身の行為は幼稚な自己満足にすぎないのだということを自覚したうえで、それでも! と過去を改変するのなら共感はしないが理解はできるし物語としても面白いものだと思うんですよ。それでいくと実は本作では過去を改変(というかパラレルワールドでのやり直しだが)を実行した人物にその意思自体はあった。だけど世界が敵になってもいいから私はあなたを助ける、ということに対する因果が作中で全くないのである。ここが一番ガッカリでしたね。結局子供の我儘がそのまんま通用してしまっていて、物語全体がそのことを肯定しているとさえ言える作りになってしまっていることが非常に残念であった。その点は新劇版ヱヴァにおける庵野の方がよっぽど大人だったなと思ってしまうよ。自分のために世界を犠牲にするということがちゃんと描かれてたもん。自称8歳児の庵野よりも幼い作劇になってしまっているというのはどうなんだろうな。
いや本当に本作は幼稚な自己満足のお話しだと思うよ。いや、主人公が幼稚なままで成長もしないっていうならそれはそれでいいけどさ、そうならせめて前編の冒頭から匂わせていた人類絶滅くらいはしろよって話ですよ。何の代償もないままに幼稚なままの主人公(二人共)を称揚してちょっとだけ取ってつけたようなデストラクションを大した演出でもない(というかエヴァがパクった妖怪ハンターの丸パクリな光の十字架)描写で描いてはいおしまい、そこそこのデストラクションはあったけどメイン級のキャラたちはみんな健在でよかったですね~、とか舐めてんのかよとしか思えなかったですね。
ていうかこれ物語として終われてないだろうとさえ思ってしまうよ。本当はまだ続きがあって数週間後にどっかの配信サイト(候補としてはディズニー+がやりそう)で真の完結編とか銘打って50分くらいの続きをやりそうな感じさえする。まぁ続きがあっても見ないけどね。
でもそれくらいキッチリ完結できていない物語だと思いますね。政府の動向とか小比類巻くんのメインのパートとかもかったるさしかなかったなぁ。挙句の果てに侵略者側の内ゲバにまでお話が広がっていくのに比べてメインの二人とその友人たちの描写が薄くなっていくのはひどい散漫さでしたね。せめて崩壊していく世界の中での刹那的な青春でも描かれていればそれはそれでよかったのだがそれさえなかったのだからもう褒めるとこどこだよって感じである。本作が原作通りだというならこんなもん吉田玲子でもどうにもならんよ。さらに言えば総作監が伊東伸高であるにも関わらず作画のクオリティやアクションの演出も前編と比べたら質が落ちていたので本当に良いところを挙げることができない後編であった。終盤の山場であるはずのオオバくんと小比類巻の対峙シーンの一ミリも面白くない構図と演出は何なんだよ。何でアクションを見せるべきシーンで顔のアップしか描かないの、舐めてんのか。
前編が半端に面白かったからというのもあるかもしれないが、すっげー期待外れでつまらない後編でしたね。今更古式ゆかしいセカイ系をやるならせめてもう一捻りしようよ。
ま、そんなわけで面白くなかったです。残念な後編でした!
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