ひでG

ビニールハウスのひでGのレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
3.9
3月初の平日休み。なんと!韓国映画のハシゴ。甘いと辛いのコリアン料理をたっぷり堪能した1日でした!

まずは、激辛料理から。
宣伝コピーが「半地下はまだマシ」
んん、「パラサイト」とは、外見は似ているようですが、かなり違う料理(映画)だと思うのですが、そこは後で触れられるかな

ど不幸過ぎて、賛否が分かれるでしょうが、僕はとても面白かったです。変な書き方ですし、「何て人間なんだ!」とお叱りを受けるかもしれませんが、不幸や不運を堪能する作品です。

そして、だいたい不幸、不運が次々やってくるだろうって予想して観に行っているんだから、「不幸過ぎるだろう!」て言うのは
キムチ料理に「辛すぎる!」て注文するようなものかなとも思います。

本作は、不幸を予想して観に来た人たち(少なくとも僕は)の想定を遥かに超えて行きます!堕ちていきます。ある意味、突き抜けています。

貧富の差、社会の底辺で這いつくばっている主人公、そこら辺は確かに「パラサイト」と似ている部分はあるでしょう。主役たちの住まい「半地下」や「ビニールハウス」という底辺(どちらも韓国社会で実際にそれらの住民が増えているらしいですね。)と対比するお金持ちの住まい。

ただ、「パラサイト」のあの家族が意図を持って(それが彼らの予想以上に上手く行き過ぎたのでしょうが)あの屋敷にパラサイト(寄生)したのに対して、本作のムンジョンは、あくまで偶発的な事件への対処としてのお屋敷がありました。計画性はなく行き当たりばったりの行動が目につきます。

「パラサイト」が高低差を巧みに見せることにより、実社会の高低差を浮き上がらせていったのに対して、「ビニールハウス」はそこまではっきりとは見せません。

むしろ、映画は、ビニールハウスに住むに至ったムンジョンの人間性みたいなものに焦点を当てているように感じました。
序盤、彼女がビニールハウスの前でカーセックスをする人に遠慮して家に入れないという場面がありました。彼女はことさら、自分を傷め、蔑み、遠慮して感情を殺して生きています。生きてきたのでしょう。

介護しているお婆さんに暴言暴力を振るわれても、ムンジョンの感情の変化は読み取れません。とても受動的に見えます。
彼女の行動、例えばある男性やセラピーサークルでのスンナムとの関係も受け身から始まり、どうしようもなくなり途中で関係を断つ。
悪い人ではないし、真面目に生きてきたんだと思います。でも、全てが上手くいかない。途中で投げ出してきた人生だったことが想像できます。

介護している老人に暴言吐かれて、「もう嫌になっちゃう💦」と愚痴を言いながらやけ酒飲むようなタイプならまだ救われます。ムンジョンの無反応が逆に怖いです。(キム・ソヒョン上手いですね〜)

今、キム・ソヒョンの名前を確認するために作品のサイトを見ていたら、彼女、宮沢りえ主演だった「紙の月」のリメイクにも主演していたんですね。そー言えば、「紙の月」のあの銀行員とムンジョンは似てますね。優しく真面目だが受動的がためにどんどん堕ちていくタイプ。

世の中には、「強運になれる!」みたいな本が出回ってますが(僕は読みませんが)、この作品はその逆で「こうしたら不幸・不運を呼び込みます!」みたいな逆説を表しているような気がしました。

ネタバレになるのかな、、未見の方は大きく改行しますので、ご注意を。










本作の特徴は、不幸になるのが主役のムンジョンだけではないということ。
主要な人物はほとんど堕ちていきます。
特に自閉的な女の子スンナムの扱いや認知症の描き方には、制作者の意地悪さ(悪い意味だけではありませんが)を感じました。
ただ、あそこまで徹底すると、かえって見応え(言葉を選んでます💦)を感じてしまいます。
中途半端なヒューマンや社会性は要りません。

傑作!とまでは行きませんし、嫌な気分になる人も少なくないでしょうが、僕は好きな映画だったなあと思ってます。
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