忙しすぎる法曹家たちとさっさと帰りたい陪審員たちが判決を下そうとしたのは有罪がわかりきったはずの事件。しかし供述を聞いた1人の陪審員は、自分自身に疑惑の目を向け出す———クリントイーストウッド監督作品。
とても重厚で濃密。
地味な展開なのに見応えしかなく114分があっという間。
行間を読ませる演出も老練の技で、群像劇というわけでもないのに1人1人の気持ちが傾れ込んでくるかのようで感情ぐちゃぐちゃ。
主人公を演じたニコラスホルトも素晴らしく、良心の呵責と義憤を天秤にかけ苛まれる普通の市民を好演。
正義にも悪にもなり切れず中途半端な覚悟を最後まで貫いたのが好き。
その覚悟を問われるクライマックスの対峙も大好き。
すべて失う覚悟で疑惑の目を向けることにした緊迫感は、あくまでも事件は振り出しに戻っただけというのがたまんない。
ついつい主人公の供述だけ聞いて結論を焦りたくなるけど鹿はねー、轢かれて崖下に落ちても折れた脚を引き摺って逃げるほど生命力強いもんね!🤔断定よくない。
自分の思い込みや願望を強化してそうではない情報は軽視してしまう『確証バイアス』の危うさへの疑惑の目を、イーストウッドはしっかりとわたしたちにまで向けている。