平田一

地下道の鳩 〜ジョン・ル・カレ回想録〜の平田一のレビュー・感想・評価

4.2
題名たる「地下道の鳩」が意味するものだとか、人間の二面性・カオスと常に相対し、父でさえ信用詐欺のカモに自分を利用など、終始トーンは冷笑的で乾いたドキュメンタリー映画。

『ナイロビの蜂』しか観てないル・カレの素人ですが、口振りから感じられる自身を俯瞰で見る姿勢、同時に過去を冷めた目線で(しかし温度は感じられる)振り返る客観性、激動の当時のことを記録のように語るなど、地頭がよい人なんだなってのがまず一つ。

もう一つは口調に感じる被害者意識の皆無ぶり。これはなかなか自分自身の忌むべきところを長い間見つめ続けて到達できる人間に感じるし、だからル・カレからは憐れんで欲しいとか、共感を抱いて欲しい姿勢が感じられません。それどころか嫌いになっても構わないって感じですw

けれど一番打たれたのは“妄想”の背景です。生まれ育った家とは異なる家を妄想する理由、その行為を行っていた背景や功罪と作者を構築しているものを突き止める楽しさが、このドキュメンタリー映画には溢れていたって思います✨
平田一

平田一