ぶみ

雪山の絆のぶみのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
4.0
団結こそ、生き延びる力。

パブロ・ヴィエルチが上梓した同名小説を、J・A・バヨナ監督、エンゾ・ヴォグリンシク、アグスティン・パルデッラ、マティアス・レカルト等の共演により映像化したスペイン製作のドラマ。
1972年10月13日、ウルグアイ空軍の571便機がアンデス山脈に墜落した事故を描く。
物語は、ラグビー・チームの選手団等が乗った571便がアンデス山脈に墜落、助けが来ないなか、サバイバル生活を送ることとなった乗客の姿が描かれるのだが、恥ずかしながら、この事故については、本作品で初めて知った次第。
序盤で、早々に墜落することとなるのだが、このシーンについては、かなりの解像度であり、事故そのものの恐ろしさが伝わってくるもの。
以降、ヴォグリンシク演じるヌマの語りが入りながら展開、前述のように序盤で事故が発生するため、その後の極限の環境の中でのサバイバル状態だけで、約二時間持つのかなという一抹の不安がよぎったものの、それはすぐに一掃、絶望しかない状況に置かれた人々の逞しさ、次から次に巻き起こる艱難辛苦に映画として飽きることはなく、ラストまで静と動を繰り返しながら、一気に駆け抜けた印象。
何より、グレーゾーンがなく、常に死と隣り合わせの状況で、皆がとる行動には正解も間違いもなく、全てはそうせざるを得なかったものであるため、誰も非難することなどできるはずないのだが、そんななか、生きるためだけに命を燃やした乗客を無名とも言えるキャスト陣が、見事な演技で再現してくれている。
加えて、終盤に生存者の名前を読み上げる男性が、実際に飛行機に乗っていたカルリトスであったのも見逃せないポイント。
ジャンルも状況も全く違うが、希望を失わないことの大切さを描いているという点では、フランク・ダラボン監督の名作『ショーシャンクの空に』と通ずるものがあるとともに、何事も諦めなかったからといって、結果が必ずついてくるとは限らないが、結果を出すには諦めてはいけないことを教えてくれる良作。

皆の中に答えがある。
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