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傷物語-こよみヴァンプ-のsatoshiのレビュー・感想・評価

傷物語-こよみヴァンプ-(2024年製作の映画)
4.3
 過去に3部作として制作された「傷物語」を再構築し、1本の映画にした作品。正直、制作発表を聞いたときは「3部作作っといて1本にまとめなおすとか、アニプレ商法か!許さん!」と思っていたのだが、尾石監督のことだからただまとめ直すだけでは終わらないだろうと思いなおし鑑賞。

 結論として、過去3部作とはまるで違う映画になっていたから本当に驚きですよ。例えるならば、過去3部作は「物語シリーズ」の劇場版で、本作は『傷物語』という「映画」。3部作との大きな違いは「阿良々木さんのモノローグがない」「ギャグとエロが可能な限り排除されている」の2点。これにより、本作は「物語シリーズ」の中でかなり異質な作品になっていると思う。

 「物語シリーズ」と言えば、とにかく阿良々木さん(もしくは他のキャラ)が語りまくるのがお約束な「語り」の物語で、主観の作品だった。しかし、本作は「語り」を丸々カット。そしてこれにより、物語そのものに客観性が生まれていると思う。我々は阿良々木さんの主観ではなく、起こっていることを客観的に見ているだけなのである。

 また、ギャグとエロを極力カット。3部作は過剰なエロ描写(主に羽川)とギャグがあった。「物語シリーズ」の肝は本筋よりも西尾維新が趣味で書いてるだろとしか思えないキャラの掛け合いなので、そこに大幅に尺を使うのは当然と言えるわけだけど、本作はそこをカット。本筋のみを語る、これまた異質な点を有する映画となっている。

 上記の変更のほか、いちから編集しなおしたという音楽、違和感のないつなぎ方がなされている絶妙な編集がなされ、過去3部作より、「映画」になっていると思った。今見ても最後のキスショットとの闘いは素晴らしい。ここから入っても問題は無いと思う。
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