くさむすび

ヤジと民主主義 劇場拡大版のくさむすびのレビュー・感想・評価

4.3
自分がドキュメンタリーを見る前の心構えとして、作中で描かれるものはあくまでも一側面でしかなく、主義主張は鵜呑みにしすぎないというのを念頭に置いているのだが、それにしても今作で登場する道警の対応は明らかにおかしくて失笑してしまう。
そして意外にも、映画がもたらす影響についての映画だったのが興味深い。大杉氏の部屋のドアには、実際に起こった拷問死事件とそれに対する学生運動を描いた韓国映画『1987 ある闘いの真実』のチラシが貼ってあり、桃井氏はポレポレ東中野に行ってドキュメンタリー映画を見たことによって今の世界を知る。断言はできないけれど、この二人は映画によってあのヤジに至るまでの行動に何かしらの影響を与えたのは映画なのではないだろうか。これらの流れで今作を見た人たちが彼らの姿に影響をされ、正当な権利を持ってしておかしなことはおかしいと言うことができるような社会になるべきだと思った。この辺の作りがドキュメンタリーとして面白い。
「安倍元総理襲撃事件は札幌地裁の判決が原因で起こった事件」という意見が今作の中で出てくるが、むしろ声が届かない、忖度が蔓延する世間の中で起こってしまった惨劇ではないだろうか。そんなことについても考える機会を与えてくれる作品。
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