安倍元首相の街頭演説で「ヤジを飛ばした」として警察に拘束された人たちと、「反安倍的」とされる発言を「妨害行為」「迷惑行為」と排除しようとする北海道警。裁判で戦うプロセスを追ったドキュメンタリー、めちゃくちゃ面白かった。
「他人に迷惑をかけちゃダメ」。小さい頃からきっと多くの人がそう教え込まれ育ってきた。とにかく迷惑を掛けず場の空気を乱さないことが美徳。そう思いすぎるが故、「言いたいことがあるけど黙っていよう」とか「とりあえず同調しとこう」という傍観者の空気が蔓延しているような気がする。
劇中ゾッとしたのが、安倍元首相の街頭演説のオーディエンスの空気感。一様に「安倍さんを支持します」の小さなプラカードを手に日の丸の旗を振っていた。超有名人が来るから、ミーハーで見に来た人も多かっただろうに、配られた時違和感を抱かなかったのだろうか…。なんだかナチスドイツや戦中日本みたいな同調圧力が気持ち悪かった。
そんな空気の中、自分の正体を明かし声やプラカードで届けようとすることはかなり勇気のいること。それなのに、輪を乱す人として、「変人」「迷惑」とレッテルを貼られ好奇の目にさらされる。かたや、ネット上では匿名をいいことにバッシングが横行している。観ていてやるせない気持ちでいっぱいになった。
この作品を観て改めて、民主主義って一体何だろう？と感じたし、不都合なことをうやむやにしたり責任転嫁したりする国のやり方への不信感がさらに強まった。政治は自分の生活と直結している。だからこそ、自分ごととしてちゃんと捉えていきたい。
