雷電五郎

ブラックサンの雷電五郎のレビュー・感想・評価

ブラックサン(2023年製作の映画)
3.5
2017年に配信されたスペインホラー「エクリプス」の前日譚にあたる話となります。
とは言っても、エクリプスを観ていなくとも差し障りはないです。ほぼ世界や設定が同じだけで別の主人公の別の話になっているのではないかと。

邦題の「ブラックサン」に英語表記がないため、サンがSUNなのかSONなのか分からず、前者であれば何故そんな話の主題にちょっと関係あるぐらいのものを邦題にしたのか理解しかねますが、後者であるのならばナルシサに「見るために必ずしも目は必要ない」と告解室で助言した彼女の神、即ちキリスト教におけるキリストの存在が赦しではなく亡霊の復讐を是とする神の息子、という意味でならブラックサンは筋が通りますがどちらか全く分かりません。
素直に原題の「シスターデス」でよかったのではないかと。

少女の時、神に啓示を受けたともてはやされるも成長するにつれ見えていたものが見えなくなってしまったシスターナルシサの焦燥と聖少女と言われ続ける重圧がじっとりとした屋内の雰囲気とあいまって息苦しさを感じさせます。
あまりダイレクトに驚かせる演出がないのはスペインのホラー映画あるあるなんですが、この独特のじっとり感がとても好きです。

ラスト、シスターソコロが復讐を果たし我が子をようやく腕に抱いた時に差す光に微笑むナルシサがすがった神は赦しではなく罪に相応しい罰を与える存在だったんでしょうか。
過去と現在が交錯しながら亡霊の望みを叶えた瞬間、罪人に対する罰は過去に与えられたものが現在に反映されるという描写が面白かったです。

コンパクトにまとまった良作ホラーでした。
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