雷電五郎

ブラック・フォンの雷電五郎のレビュー・感想・評価

ブラック・フォン(2022年製作の映画)
3.9
ホラーといえばホラーですがこの世ならざる者達が主人公の少年フィニーを手助けし、誘拐犯からの逃走を促すというスリラー要素の方が大きく、ややびっくりする演出はありつつもホラー的な怖さを強調しすぎず亡者達がダイヤル式の電話を介してフィニーに逃げる方法を伝え生存を助けることがメインになってます。

フィニーとグウェン兄妹の母親がいわゆる「霊感の強い人」だったことが父親の言動から伝わり、夢を通じて現実に起こったことを見通すグウェンと電話を介して死者の声を聞くフィニー、二人ともに母親の素質を継いでいることが分かるので、おそらくフィニーでなければ助からなかったのだろうということも合わせて考えると死者の存在に気づけない少年達ではあのラストにたどり着くこと自体が不可能だったと分かるのがゾッとします。

父親はグウェンにだけ母親の素質が現れたと考えていたようですが、自覚こそないもののフィニーにも素質自体はあったのでしょうね。

フィニーの親友であるロビンとフィニーの最後のやりとりはちょっと泣けました。他の少年達とは違い、恐ろしい姿をさらすのではなく影法師のように寄り添うロビンの激励が響きました。
とはいえ、まさかのラストでここまで被害者が清々しくケリをつけるパターンも珍しいとなと(笑)

OPの映像の不穏さや雰囲気の作り方がうまく残酷な描写も少ないですし、ずっと緊張感があって面白かったです。

亡者を主人公を助ける側に置く場合、感動の話にしがちですがそこを亡者達の復讐を果たす者として主人公を生かすという側面を持たせて持ちつ持たれつにしてるため、必ずしも善意のための手助けだけではなかった部分を感じてゾワッとした寒々しさを覚える作品でした。
雷電五郎

雷電五郎