雷電五郎

リム・オブ・ザ・ワールドの雷電五郎のレビュー・感想・評価

リム・オブ・ザ・ワールド(2019年製作の映画)
3.5
ある一件以来部屋に籠りがちなアレックス、父親から捨てられた少女ジェンジェン、少年院から脱走してきたガブリエル、金持ちだったが実は両親が倒産し虚勢を張り続けるダリシュ、訳ありの子供達が集うキャンプ地で突然響き渡る爆発音と、そして襲いかかる異形のエイリアン。
SF版グーニーズのような子供達のNASAへ至るまでの過酷な冒険譚といった作品でした。

話がシンプルなので主となる子供達4人に大部分の時間が割かれていて大人は親以外ほぼ即死にます。いっそ清々しい程に大人が死ぬので大人と子供のウェットなエピソードに尺が割かれない分、子供達の視点に集中できて楽しかったです。

正真正銘子供達が主人公の話なので設定や話の簡素さについて突っ込むのは野暮ってもんだと感じます。大人が逐一戦って死んで状況を説明して…という重厚なSFならそれこそごまんとある訳で、保護者不在の子供達が怯えて逃げてそれでも立ち向かいながら壮大なはじめてのお使いを見守る映画かなと。

エイリアンが人間を食べるという残忍な習性ながら子供達が主役であるせいかホラーじみた感覚があまりなく、こざっぱり見れるのもよかったです。まぁ、大人はばんばん死ぬんですけども(笑)

ジェンジェンの設定がいまいち分かりにくかったのが少々惜しくあり、あれだけきびきび状況を判断して行動できるなら何かしら訓練を受けていたのか、フィクションから影響を受けて自主的に訓練していたのか、その点はもっと掘り下げてよかったのではないかと思いました。
ジェンジェンが一番格好よかっただけに。

ダリシュの下ネタも最初は大人みたいで「えっ、この年齢でそんな冗談言うの?!」とギョッとしましたが、後にあれが彼のいわゆるイキりであることが明かされてちょっとホッとしました。
既に子供の頃から「男らしさ」の虚勢を身につけないと仲間ができないという大人の良くない部分だけを学習してしまうあたりが子供らしいとも感じます。ああいうジェンダーテンプレートは子供達のためにもなくしていきたいものですね。

恋愛要素は少々ノイズに感じましたが道中に過度にストレスを与えるような深刻な仲間割れなどのエピソードもなかったのですんなりすっきり楽しめる一作だと思います。

アレックスのお父さんの話がちょっと泣けましたね。あれはアレックスが自責の念を抱えてしまうのも分かります。
「思う通りにいかなくとも正しいことをするべきだ」というセリフが印象に残りました。
雷電五郎

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