さくぞー

アメリカン・フィクションのさくぞーのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

冒頭からキレッキレ。古のディズニーの名作が謎自己検閲で視聴不可能になったりしているのにマジでムカついてたからもうたまらん。現代でやるべき差別などの規制を過去の歴史にまで適用する愚かさ。
出版社や作家の白人の描き方には『バービー』に通じるものがある。やっぱり"おじさんが作ってる"みたいなネタも万国共通なのかね。

所々の表現やジョークなど、日本人の自分には分かり切れてないなあという点はたまにあるが全体を通しては非常に楽しめた。とはいえ鑑賞後、細かくレビューしている個人ブログなどでの補足は必須だろう。
じっくりセットアップするため、あらすじの部分にいくまでに半分の時間がかかるのでキャラクターやテーマ性にハマれるかで大きく評価は変わりそう。全体的な作風が好みじゃなかったせいかハマれなかった。風刺が強く希望を感じづらかったのかな。風刺しつつも何か大きなフィクションとしての希望的なものをもっと見たかった。カミングアウトしてから大衆向けコメディみたいに全部上手くいくオチでも作品の風刺的メッセージ性は残りそうと思ったり。でもこの作風じゃなかったら違うよなあ。そうは言っても内容に留まらず、タイトルからジャケットまで最高だったと思う。それぞれの要素や演出は好きだが、あらすじやジャンルなどから自分の好みとして想像した方向のパワーが足りなかった、ということで。やはりバービー的な派手さのあるものが好きなんです。
でもでも絶対この作品は必要、評価されて嬉しい。この鼻のなさでバービーとかと正面から殴り合えてるのがいいんだよなあ。

そういう細かいメッセージ性を抜きにしても、作家が本来書きたいものではなく大衆向けの作風に一変して売れてしまうという"あるある"ものとしての側面・各業界へ喧嘩を売りまくり、なりすましコメディとしての軽い面白さもあり楽しく見える。審査員の話がきた時点で笑える。
しかし随所に挟まれる風刺だけでなく、モンクの置かれている幸せと苦しさが絶えず続いていくリアルな家族の物語などで引き締められる。
メイナードから「○○みたいなの(売れてるやつ)を書けばいいのに」って言われるシーンよ…。

きっかけは気が合ったコララインとファックを通じて険悪になり、嫌悪していたシンタラとファックを通じて気が合うところとか、人間関係として秀逸な描き方。こういう同業者だからこそみたいなシーンめっちゃ好き。その後の論じ合いも、商業主義と作家性のぶつかりあいで、非常に見応えがあった。
あとはこういう作品あるあるだけど、ファックの前に書いてた本来の作風も見たかった。黒人は口が悪いみたいなのを嫌ってる風だが、本人は口が悪いし、もっと具体的にどういう点に重きを置いた作風を本来書きたいのか知りたい。

寝て起きて追記だけど、観てるだけだとファックを書くまでモンクばかりで小説家っぽさがない(むしろ作家から嫌われてる評論家ぽい)から、ファックで売れてしまったジレンマとかを感じづらく入り込みきれなかったのかもしれない。
ファックなどに嫌なものはよく分かったから、モンク本人が書きたい・書いていた作品はどの様なものなのか、批判から観客に逆説で想像させるのではなくしっかり描いてほしい。例えばNARUTOとサムライ8、例えば月華美刃とSPY×FAMILYのような…。

ジェフリー・ライトの一瞬で変わる細かい表情の芝居が素晴らしい。眉毛で全て表現する。善人だが好きになれるかは微妙な奥行きのあるキャラクター性を体現。
コメディとしても、スタッグを演じてる時も面白い。吹き替えがスギちゃんみたいになってて笑ったぜぇ。
映画化されたらキャストが原作の表紙に載るのってアメリカでもあるんだ。

甘いもの食べた時のラッコ先生(ちいかわ)みたいな顔になった主人公の前に爆拍手する白人女性が重なるシーン大好き。
オチいっぱい考えるとこでアイアンマンネタしてくるかドキドキした。

映像:=====B
脚本:======A
編集:=====B
俳優:=======S
人物:======A
音楽:=====B
音響:===D
【MVP】モンク
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