イトウモ

アメリカン・フィクションのイトウモのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.0
S・B・コーエンみたいなネタものを期待したが、むしろウディ・アレンやバームバックみたいな知的なユーモアと裕福なインテリの私生活ものでほっこりした。
監督が『マスター・オブ・ゼロ』などでキャリアを積んだらしいことも調べて分かり納得できる。

触れ込みの、インテリ黒人作家が貧しい黒人の犯罪と暴力の世界をでっち上げた小説を書いたら売れてしまったというスキャンダルはそこまでスキャンダラスに描かれず、
趣味はいいがうだつの上がらない中年インテリ作家の中年の恋や、親の介護や家族のトラブルが細々と描かれて繊細な告白小説の趣がある。

それで感傷的な映像が綺麗かというと、別に映像的に凝っているわけでもなくて終始記号的で脚本映画である。凝ったテレビドラマという感じ。話の落とし方もその印象。

ボケた母親がゲイの息子に「やっぱりゲイじゃないと思ってた」と言わせるシーンは狙い過ぎだと思う。だが、そのくらいシーンというよりもセリフで聞かせる映画になっている。「あいつのどこがいいんだ」と言われて、主人公の恋人が「funny なところ。彼は sad funny なんだ。3本脚の犬」という。こういう台詞が一番良かった