Ryoma

異人たちのRyomaのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.3
華やかで煌びやかなロンドン🇬🇧にありながらも、華美さは皆無でひっそりと佇むタワーマンション。観終わってそこに住む2人の男性の壮絶な生い立ちや計り知れない苦しみを理解した上で振り返ると、その対照的とも言える2つが映し出されることで、それだけで誰もが幸せに生きていけない現実や死にたいほどに苦しみを抱えながら生きている人もいるのだということを暗喩的に伝えてくれていたのだと思い知らされた。
親との確執や後悔、幼少期にできた深い傷、そして、お互いの痛みを分かり合える人の存在。親にさえも容易に打ち明けられない社会的マイノリティーの人たちの現実社会での生き辛さがひしひしと伝わってきて、胸が締め付けられるようだった。同時に、社会的マイノリティーの子を持つ親の視点からも彼らの子への初雑な感情であったり一途な愛情が感じ取れうるっとした。
アフターサンとはまた違った良さが光るポール・メスカルも良かったけれど、繊細で複雑な心情の機微が伝わってくる主演のアンドリュー・スコットもとても良かった。
現実と夢が交差する少しファンタジックな要素もあり、完全に咀嚼できかねる脚本だったけれども、たくさんの優しさと愛、希望が感じられる良き作品だった◎
『荒野にて』が印象に残っているアンドリュー・ヘイ。派手さはないけれど静謐の中にある“希望“が強く惹かれる魅力だと再確認できた。
Ryoma

Ryoma