タツベイ

異人たちのタツベイのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.2
「寂しさと
 ゲイであることは
 別物だよ。」

両親と死別した少年時代。
打ち明けられずにいた
自分自身の性的指向。
マイノリティを抱えて
前に進むこともできず
ずっと孤独に生きてきた。

同じマンションに住む
ハリーというゲイの青年との出会いや
突然目の前に現れた
死んだはずの両親。
現実と空想の狭間を彷徨う中で
今まで感じたことのなかった
愛の力を知ることができた。

死を乗り越え、愛を知り
これから始まる人生が
1人であろうとも
孤独ではないと思えたら
辛くても生きていく力をくれた
あなたの隣で
最期に、讃歌を口遊む。



「異人たちとの夏」は未読、未鑑賞。
原作をなぞりつつも
監督自身の体験談を交えた作品。
ゲイであることのマイノリティや
それを両親に話せず死別した孤独に
苦しめられて生きてきた中年男性のアダム。
ロンドンの人気のない場所に佇む
タワマンでひっそりと暮らしていたが、
唯一同じマンションに住んでいる青年の
ハリーと出会い、会う回数も増え、
ずっと感じたことのなかった愛を知っていく。

死別したはずの両親に会いに行くことの
違和感は徐々に薄れていき、
アダムが本当に12歳の頃に戻ったような
顔になっていくような気がした。
現実にはあり得ないと分かりつつ
そこに流れる暖かい時間を求めるアダムやけど
その時間は長くは続かず。
それでもアダムの中に確かに芽生えた愛は
足踏みを続けていたアダムの人生の
背中を押してくれたことに変わりはない。

ゲイを題材に扱った作品特有の
危うさや儚さを
これでもかというくらい感じた。
切なすぎるラストシーンの鮮烈さを
いつまでも覚えているような気がする。
タツベイ

タツベイ