このレビューはネタバレを含みます
原作は山田太一さんの小説「異人たちとの夏」。大林宣彦監督で1988年に映画化されている。
どちらも未読、未鑑賞。
今年は意図せずして多くのBLものに当たってしまった気がする。
特に偏見はないが好んでもない。
正直なところ眉間にシワが寄ってしまうシーンが多め。
そもそも原作の主人公はゲイではない。らしい。
しかし、そこにその設定を持ってきたことにはやはり意味があるのだと思う。
ゲイ(クィア)であることでの苦しみ、過去から受け続けてきた心の痛み、孤独、寂しさ等が私が観ても痛いほど描かれていた。
監督自身を主人公に投影しているのかとも想像した。
死んだはずの両親が実家を訪れると普通にそこにいる。
同じマンションに住むハリー。
何なら主人公本人のアダムまで、もう皆生きているのか死んでいるのか分からなくなる。
謎のまま話は進む。
両親と再会し、最初は明らかに戸惑いながらもゲイとしても受け入れられ、ちゃんと愛されていたことを知り、次第に自分の心が癒されていく。
そこでアダムは今度は自分がハリーの苦しみを知り、愛で包み込む。
怖がらなくていいよ。僕が守ってあげるからと。
一体何が起こっているのか。
何が現実世界で、何が妄想の世界なのか。
原題は『All of Us Stranges』で、誰もが異人であることをタイトルで明示している。
つまり、登場人物全員がこの世にいなくて、主人公アダムの妄想ではなく、監督の妄想、または理想の世界を観させられたのか?
監督がインタビューで語っていたのは、人生において味わう痛みや苦しみ。それを和らげてくれるのは”愛”だと。
その愛の世界を観させられたのだろうか。
私なりの結論はそこに落ち着いた。
正直混乱する本作のような作品は苦手。
物語に入り込めない。
それでも最後になるほどそういうことだったのか、などと納得できるならまだしも、本作はスッキリしなかった。
単に私には合わなかったのか。
観る人によって解釈や思うことは変わる作品かもしれない。
とはいえ、アンドリュー・スコットとポール・メスカル2人の繊細な演技が素晴らしかった。
特に、ポール・メスカルは『アフター・サン』のあのお父さんか!?
そして今公開している『グラディエーターⅡ』の予告でも!!
本作とはまた180℃違う役も観てみたい。