Punisher田中

ドリーム・シナリオのPunisher田中のレビュー・感想・評価

ドリーム・シナリオ(2023年製作の映画)
3.8
承認欲求と自制心の対峙、
これらは永遠のテーマとなりつつあるのかもしれない。

承認欲求と夢をテーマに描かれた本作だが、「シック・オブ・マイセルフ」を描いたクリストファー・ボルグリが監督を務めるのであれば、何となくどんな内容の話かと考えるのは想像に容易い。
夢にニコラス・ケイジが出てくる←何故?を問う作品ではなく、承認欲求と人間の醜悪さをこれでもかと描いていた。
A24作品全般に云えることだが、特異な状況に対して誰もが想像できる最悪のケースをよくもまぁ毎回見せてくれるなと。
ただ今作は、そこの重圧を強めに魅せるのではなくて、サラッと魅せてきては「で、お前は?」と急旋回してくる姿勢、非常に面白くて好き。

様々な要素を紐解いていけば結構単純な作品だと思っているのだが、いかんせんストーリーとテーマの結びつきが複雑すぎて紐解くのは難しいように感じた。
答えはわかるのに辻褄合わせが出来ない、といったような。
未だに科学的にもそこまで解明がされておらず、夢占い等といったチンプンカンプンなものも蔓延っている今だからこそ描けるもの。
ヘンテコだし、ブラックだし、しんどいのにラストシーン見たさに、また劇場へ足を運びそうになる。なんだか憎めない作品。

そもそも論だが、夢に出てくるだけでここまでの人気にはならないだろうし、「薄気味悪い」というイメージが勝手について回るだけな気もする。
夢って結局何なのだろうか、実態が無いのに個々に対する影響力があって、夢の質によっては全く休めた気がしないし、時には2度寝を誘ってくることもある。
記憶に残るか残らないか曖昧な形で進行していく感じは夢そのもの、ずっとハッキリしないし、レビューを書いてる今も「本当に鑑賞しているのかどうかはわからない。」
本当にどうなんだろうか。
実像を用いて虚像を作る映像作品はある意味夢と同じ在り方なのかもしれない。