栄枯盛衰の作劇はやはり素晴らしい
ということを知らしめた傑作
一端のギャンブラーからカジノ経営者に上り詰めたある男の人生を主人公と共に振り返る、ありふれた傑作。
どんなに頭が回ろうが、1人の女に対しては理性が弾け飛ぶ男が墜落する様は滑稽でありながらも一つの美にも感じられた。
上手くいっていた生活も、綺麗な部屋も全て女がめちゃくちゃにしていく。どんなに綺麗にしようが、整理しようが、女の手によって滅茶苦茶になる。
この流れが凄く美しい。
人が直す過程もあるだろうが目に映るものだけでなく、男の心も物を壊す動作と共にグチャグチャにしているのがよく感じられる表現力には脱帽。
単純にこの男の人生が面白すぎるのもあるが、この男の近辺の人間にもしっかりと目を向けているのが上手。それでいて主人公を食うわけでもなく、アクセントになっている。
中でも面白く感じたのは、ありきたりなカメラワーク。一見普通のゆったりとしたカメラワークだが、女性を映すときはスピード感を感じる。(体感だが)
この小さな手間によって、女性が出てくる際は不思議と魅力的に感じたり、どうにも面白く感じられた気がする。
ゴッドファーザーもグッドフェローズといった傑作がある中で、今作もまた栄枯盛衰の傑作だということを感じた。