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サンクスギビングのMrOwlのレビュー・感想・評価

サンクスギビング(2023年製作の映画)
4.0
クエンティン・タランティーノ監督とロバート・ロドリゲス監督が手がけた2007年のアンソロジー映画『グラインドハウス』内で上映された『感謝祭』(Thanksgiving)のフェイク予告編を長編映画化した作品です。フェイク予告編を監督したイーライ・ロスが長編映画に際しても監督を務めています。
イーライ・ロスはアメリカ・ボストン出身。映画監督、映画プロデューサー、脚本家、俳優をこなす多彩な才能の持ち主で、新世代のホラー映画監督として、注目を集めています。
2006年公開の、旅行先での監禁を描いた『ホステル』で高い評価を得ています。三池崇史監督をはじめ、数多くのホラー映画の巨匠たちを敬愛しおり、ホステル・シリーズ第1作には三池を、第2作にはルッジェロ・デオダート監督を特別出演者として招き、敬意を表しています。製作ではラスト・エクソシズム、俳優としてはクインティン・タランティーノ監督のイングロリアス・バスターズで、バスターズの一員ドニー・ドノウィッツ役を演じていたりします。
映画の舞台は、感謝祭(=サンクスギビング)発祥の地マサチューセッツ州プリマス。プリマスは、アメリカ合衆国マサチューセッツ州の南東部にある郡で、人口は53万人。1620年にイギリスのピューリタンたちがメイフラワー号でアメリカ大陸に上陸した地で、ニューイングランドにおける最初の植民地です。大西洋岸なので、大西洋を挟んで、英国と向かい合っている位置関係ですね。一年に一度の祝祭に沸き立つ人々でしたが、町のダイナーで働く女性が何者かに惨殺される事件が起こります。その後も一人、また一人と犠牲になる者が現れます。殺害方法は残酷で、過激な描写があるのでR18指定です。町に暮らす地元の高校の仲良しグループのジェシカたちは、ジョン・カーヴァーを名乗る謎のインスタグラムの投稿にタグ付けされたことから、自身が事件の渦中にいることに気づきます。とある日に高校生など若者グループが犠牲になっていく、という13日の金曜日などの系譜を受け継ぐ王道ホラー映画と位置付けることもでますし、ジョン・カーヴァーのマスクを付けたシリアルキラーは一体誰で、同機は何なのか、というサスペンス映画の要素も持っているので、ホラーとサスペンスを上手く融合させた作品とみることもできます。殺人鬼がつけるジョン・カーヴァーは、実在の人物で、実際にプリマスが植民地だった際に知事をしていた英国出身の政治家・清教徒(ピューリタン)です。およそ400年前とは言え、実在の人物で、知事だった人物の仮面を殺人鬼の象徴にするアイデアは、なかなかに攻めた試みだと思いました。犯人は予想できた人もいると思いますが、自分はハズレました。終盤の犯人が明らかになるところから遡れば、予想できる要素は示されているので、犯人捜しの映画としても楽しめるかと思います。自分はハズレたことで、脚本の妙を感じることができたので、その点も高評価ですね。殺害の描写などは過激なので、その点はホラー好きでも楽しめるかと思いますが、展開や見せ方はサスペンス映画の色合いが濃いので、驚く恐怖よりも、正体不明の殺人鬼に追われる、という恐怖感が演出された作品になっています。

以下は感謝祭についての余談です。
感謝祭(かんしゃさい)またはサンクスギビング(英語: Thanksgiving Day)は、アメリカ合衆国やカナダなどで祝われる祝日のひとつとのことで、Thanksgiving と略称されたり、あるいは七面鳥の日(Turkey Day)と呼んだりもするそうです。アメリカでは毎年11月の第4木曜日、カナダでは毎年10月の第2月曜日が感謝祭の日となっています。日本のプロテスタントでは、収穫感謝日(しゅうかくかんしゃび)と呼び、日本で当日はこのために割り当てられた祝日はありません。感謝祭は、「収穫と前年の祝福に感謝と犠牲を捧げる日」として始まりました。感謝祭は宗教的および文化的伝統に歴史的なルーツがあるが、世俗的な休日としても長い間祝われてきたとのことで、日本の神社で行われる例祭や新嘗祭、のような趣旨の日と捉えると近いかも知れません。
尚、感謝祭のメインは感謝祭の夕食で、親族や友人と祝うのが一般的だそうです。アメリカでは、テレビでアメリカンフットボールの試合を放映していることがあり、観戦する家庭も多いとのこと。本作でも登場する高校生が所属するのはアメフト部ですね。伝統的な正餐のメインディッシュとなるのは、七面鳥の中に角切りにしたパンを用いた詰め物(「スタッフィング(stuffing)または「ドレッシング(dressing)」と呼ばれる)や野菜、ハーブなどの詰め物を入れた大きな七面鳥の丸焼です。そうしたこともあり、感謝祭の日は「七面鳥の日」(Turkey Day)と口語的に呼ばれることも。切り分けた七面鳥にグレービーソースとクランベリーソースを添えて食べることが多いようです。
イギリスからマサチューセッツ州のプリマス植民地に移住したピルグリム・ファーザーズの最初の収穫を記念する行事であると一般的に信じられています。ピルグリムがプリマスに到着した1620年の冬は大変厳しく、大勢の死者が出ましたが、翌年、近隣に居住していたインディアンのワンパノアグ族からトウモロコシなどの新大陸での作物の栽培知識の教授を得て、生き延びることができたとのこと。1621年の秋は、特に収穫が多かったので、ピルグリムファーザーズはワンパノアグ族を招待し、神の恵みに感謝して共にご馳走をいただいたことが始まりであるとされています。イギリス人の入植者もワンパノアグ族も秋の収穫を祝う伝統を持っており、この年の出来事は特に感謝祭と位置づけられてはいなかったとされています。またプリマス植民地で最初に祝われた1623年の感謝祭は、食事会というよりもどちらかというと教会で礼拝を行って、神に感謝を捧げる宗教的な意味合いが強かったとのこと。ピューリタンも、ネイティブアメリカンも、宗教・文化が異なるものの、収穫を祝う伝統が共通しているというのは興味深いですね。収穫祭という点では、日本も同じく自然の恵みに感謝を捧げる伝統・文化がありますね。
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