ナーオー

サンクスギビングのナーオーのレビュー・感想・評価

サンクスギビング(2023年製作の映画)
5.0
遂にやってきた!
みんな大好き、イーライ・ロス最新作!

『キャビンフィーバー』、『ホステル』、『グリーン・インフェルノ』など悪趣味ゴアホラー映画の監督として語られがちなイーライ・ロスですが、近年は『ノック・ノック』、『デス・ウィッシュ』、『ルイスと不思議の時計』などホラーだけではなく、スリラー、アクション、ファンタジーなどのジャンルにも挑戦しており、そのどれもがしっかり面白いというイーライ・ロスのホラー映画完全復帰作となった本作。

当初はクエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスが1970〜80年代のB級映画のオマージュとして製作した『デス・プルーフ』と『プラネット・テラー』に合わせて製作された実在しない映画の予告でしたが、『マチェーテ』や『ホーボー・ウィズ・ショットガン』のように長編映画化された本作。しかしこの2作のようにフェイク予告を1から10まで再現して長編化したような作品ではなく、SNS社会や消費社会を皮肉たっぷりに描いているなど現代的にアップデートされたイーライ・ロスにしか作れない、イーライ・ロスならではのスラッシャー映画に仕上がっており、イーライ・ロスファンの自分としては大満足な快作ホラーでした。

スラッシャー映画のツボをしっかりと抑えた上で社会に対する批評などをサラリと入れてくる。特に映画冒頭のブラックフライデーの場面が素晴らしい。見事な掴みでした。セール目当てに押し寄せた客たちが暴徒に変わり、集団が生む暴力をリアルに描き、『ピラニア3D』の大パニック級の地獄絵図をまさかオープニングから見れるとは……

目当ての商品を手に入れそうとするあまり、死傷者が出ていることに気がつかずカオス状態。大勢の群衆に気づかれずに踏み殺される警備員の姿は2001年の明石花火大会歩道橋事故を想起させる。

イーライ・ロスはゴア描写ばかりに注目されがちですが、こういう惨劇が起こる過程などを丁寧に描く腕もある。やっぱりイーライ・ロスは信頼できる監督だということを改めて確信した場面でした。

そして予想の斜め上をいくグロさと痛さ。他のスラッシャー映画ではあまり観ないゴア描写やそのレパートリーの多さ。素晴らしい!!

フェイク予告にも登場した殺害方法を再現しているところもありますが、その殺害方法自体がフレッシュ。あのフェイク予告大好きな自分としてはトランポリンの場面を再現していたことに感動しました。

またフェイク予告ではマイケル・ビーンが演じていた保安官役をまさかのパトリック・デンプシーが演じており、他にもリック・ホフマンやジーナ・ガージョンなどベテラン俳優たちが勢揃い。特に保安官役のパトリック・デンプシー。初めてデンプシーが本作に出演することをニュースで知った時は、"嬉しいけどなぜデンプシーがスラッシャー映画に⁈"と驚きました。しかし観終わった後だと、その為のデンプシーだったのか!と納得させられました。

こーいうジャンル映画が好きな人にとっては間違いなく大満足できる映画だと思います。

強いて言うならフェイク予告にあった、最低最悪な"生首腰振りバック"を再現して欲しかった… 笑

最低過ぎて採用されなかったのかな?

あと『デスプルーフ』や『プラネット・テラー』のような意図的な画像ノイズや音割れなど粗い画質じゃなかったのが残念。是非とも"グラインドハウス・バージョン"を製作して、Blu-rayとかに収録して欲しい。

とはいえめちゃくちゃ面白い映画!
それしか感想が出てこない笑

悪趣味で残虐、だけど鋭い批評性のある見事な映画。これは"傑作"と言いたいし、イーライ・ロスの最高傑作とも言いたい……

この映画が2023年の映画館で観た最後の映画で本当に良かった!!!

ということで、ロブ・ゾンビさん、あ
とエドガー・ライトさん。

本作のヒットに便乗して『ナチ親衛隊の狼女』と『Don't/ドント』の長編映画化をお願いします!!絶対観ます!!
ナーオー

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