ナーオー

ペイン・ハスラーズのナーオーのレビュー・感想・評価

ペイン・ハスラーズ(2023年製作の映画)
1.0
盛り上がりそうで 盛り上がらない のは
敢えて??
それともデヴィッド・イェーツが下手なだけ⁈

アメリカで社会問題となっている、依存性の高い鎮痛剤の過剰摂取による死亡者数の増加、いわゆる"オピオイド危機"を基に映画化された本作。とはいえモデルとなった人物名や会社名などは架空。早速ここに疑問&不満があるけど、それはまた後で…

そんなことより、全く面白くなかった…
題材は悪くないので作り手次第でもっと面白い映画になったはず。恐らく製作陣はマーティン・スコセッシの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を参考にしたと思われますが、ブラックコメディとしても、オピロイド危機を真面目に描いた社会派映画としても中途半端。

『ハリーポッター』シリーズや『ファンタスティック・ビースト』シリーズなどで知られるデヴィッド・イェーツ監督。失礼ながら過大評価されている監督の一人とずっと思っていました。特に『ハリーポッター』シリーズはアルフォンソ・キュアロンの後ってこともありますが、ドラマ演出の下手さだけではなく、キュアロン監督のバキバキにダークでカッコいい画と比べるとイェーツ監督の『ハリーポッター』は常にのっぺりした締まりのない画で、出来の悪いテレビドラマのような軽〜い感じで なんだかな〜 という印象しか残っていません。

本作『ペイン・ハスラーズ』は『ハリーポッター』や『ファンタスティック・ビースト』のように映像でなんとか誤魔化せるような映画ではないので、単純にめちゃくちゃ退屈で、何処かで観たような場面と展開が続く、全く面白くない映画でした。わざわざこれを観るなら『ウルフ・オブ・ウォールストリート』をオススメします…

まず冒頭からダメでした…

エミリー・ブラント演じるシングルマザでストリッパーの主人公がクリス・エヴァンス演じる弱小製薬会社の幹部に販売員としてスカウトされる場面。スカウトされた理由が意味不明… 会話から彼女の素質を見抜いた的なことを言いますが、物凄く唐突過ぎて… 雑なだな〜 と笑ってしまいました。

そしてビジネスが上手くいき、成り上がっていく展開も不思議なくらい盛り上がらない……

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は成り上がっていく様子を金!金!金!女!女!女!ドラッグ!ドラッグ!ドラッグ!パーティーだ〜!!と下品なユーモア満載で描かれましたが、本作でもそういう要素があるにも関わらず、盛り上がりそうで盛り上がらない… これ敢えてなのか、単にデヴィッド・イェーツの盛り上げ方が下手なだけなのか…

最終的に主人公は会社がやった悪行を世間に内部告発という形で公表。自分のしたことの非を認め実刑判決を受け、自らの過ちと向き合う。そして問題は服役後です。

いくら内部告発者として世間に公表したとはいえ、医師たちに問題の薬を処方するように仕向けたのは紛れもなく彼女。
そんな彼女が刑務所入ったから自分は許された くらいの感覚で家族や友人に囲まれて幸せそうな人生を送っているラストには納得できない。

そもそも、このライザという主人公を
"正しい人"として描いている時点でおかしいと思いました。しかもラストはライザだけではなく他の販売員たちも割と幸せそうな充実した生活を送っており、彼らを批判的に描いているならまだしも、これだと普通に後味悪い。

よってアメリカで酷評されているそうですが、実際にオピオイドで苦しんだ人やその家族など当事者が本作を観たら激怒すること間違いなし。

あと人物名や会社名を架空の物へ置き換えたことにより、深刻さが伝わらないのも問題かと。オピロイド危機ではないけど『ダム・マネー』とか人物名とか会社名などはそのまま映画化されているんだから、やろうと思えばできるはず。こういうところも本作の薄っぺらい仕上がりに影響していると思いました。

社会派映画に必要な批判性や風刺映画に必要な毒も足りない。劣化版『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

個人的には普通に駄作だと思います……
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