KnightsofOdessa

Humanist Vampire Seeking Consenting Suicidal Person(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

2.5
[カナダ、人を殺せないヴァンパイアの恋] 50点

Ariane Louis-Seize長編一作目。サシャは吸血鬼一家の一人娘。しかし、彼女は繊細すぎて人殺しができない!父オーレリアンは彼女の味方をしてくれていたが、流石にそんなことも言ってられない。実家を追い出され、同年代で"食欲"に忠実な従姉妹デニーズの家に預けられる。食料確保のために手当たり次第殺しまくってるデニーズを尻目に、甘々な父親からの仕送りならぬ"血送り"で糊口を凌いでいた。一方、高校で孤独な生活を送る青年ポールは増大する希死念慮を押さえきれず、しかし自殺する勇気もないという苦しい生活を続けていた。二人は自殺防止集会で出会い、ポールは自殺としてのサシャの食事を行うことに同意する。人を殺せないヴァンパイアという設定は興味深いし、それをジュブナイルものと結びつけるのも面白いと思うが、サシャは自分が手を下さないというだけで母親の狩ってきた人間の血は普通に飲んでいる。ということはつまり、豚肉は食べるけど自分で食べる豚は殺せない人間、という存在に近いことになる。そういう意味では風刺的なのだが、それがヒューマニストかと言われると疑問符が付く。寧ろ、あまりにも現実離れした設定を前に風刺的云々というのはどこかへ飛んでいってしまい、駄々っ子のようにすら見えてくるのが勿体ない。ポールは自殺志願者だがサシャは自分で手を下すのを躊躇している、それなのに途中でポールを虐めていたイジメっ子を勢いで食い殺す場面があって、そこの線引はどうなってるんだよ、と思うなど。そんな感じで、人を殺すということの重さがフワフワしているので、ジュブナイルものとしての恋愛感情変化とかにはついて行けず。着眼点は良いと思うけど、恣意的に人命に順位をつけるのは絶対にヒューマニストではないだろ。ちなみに、サシャ役の人をどこかで見たことあるなあと思ったら、『ファルコン・レイク』のお姉さんじゃないか!となりました。
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