気になる俳優からNetflix「ラスティン」辺りからお気に入りの演者に個人的には格上げしているコールマン・ドミンゴ。
抜群に良かった。今年ベスト級に好きな一本になった。
刑務所内の更生プログラムで舞台演劇を行う。「堀の中のジュリアスシーザー」をはじめ似たような題材の作品は幾つかあるが、本作が独創的なのは、実際の刑務所のRTA参加者が本人を演じており、創作と現実がまるで入れ子構造になっている事。
まさに「演じる」という事の本質、その"プロセス"の考察、そしてそれはそのまま如何に「生きる」かというものに通じていく。
「演じる」というと、まるで真実を覆い隠し虚偽を装う様に思えてしまうが(劇中、主人公が赦免面談で指摘される様に)、その実そのプロセスにおいて、自身を曝け出し真実に正に迫っていくものなのだ。
そしてそれは、作りものの世界に真に心を動かすものを見出そうとする「映画」にも言える事。
強さを偽り自身の弱さを繕い、過ちを犯した男たちが「演じる」事によって救われ、そして赦し赦されていく。
フィルムの質感が残るワイズマンのドキュメンタリーの様にストイックで且つ静謐な美しさをたたえる撮影と、印象に残る台詞の数々。
厳つい男たちの鷹揚としたユーモラスで、そこに悔恨が滲む表情が味わい深く。
どの男たちも忘れ難い。
「サウンドオブメタル」でも、厳格ながら慈愛に満ちた佇まいが素晴らしかったポール・レイシーが、同じ様に主人公たちを導く演出家で登場してくれて嬉しかった。