くさむすび

違う惑星の変な恋人のくさむすびのレビュー・感想・評価

違う惑星の変な恋人(2023年製作の映画)
3.9
登場人物全員どこかしらズレているのだが、明確なツッコミ役を置くわけではなく、皆がツッコミに回っていたりしていたからこそ各々のキャラクターを好きになる映画になったと思うし、バランスの取れた会話劇が成り立ったと思う。
とにかく序盤から掴まれた。「こういう作品なんだ」と分からせられる、莉子さん演じるむっちゃんがグリコに別れた原因を聞くあたりから笑ったし、その後のモーの実質初対面の女性にする話題とは思えない質問も、最初に「場を繋げたいから」と踏み込んだ質問をしたむっちゃんの姿と重なっているので、嫌悪感を薄めつつもしっかり変人を演出していたのがとてもテクニカルだと思いました。携帯で文字を打つシーンをクロスカッティングで見せることにより、中島歩演じるベンジーの人となりをより強調していたり、今作を構成する98%が会話なんだけれども、直接的な説明台詞に逃げず説明していたのが凄い。
演出も良いけど、会話も一々笑える。特にグリコが喫茶店でモーを監視する際の一連の流れは笑いを堪えるのが大変で、「なんか夢みたいですね」という一言をぶった斬るワードは笑ったし、"お釣り"の件も本当おかしい。個人的にあそこがピークだったかなとは思ってしまうけれども、それでもスポーツバーのシーンの普通じゃないやり取りだったり、やっぱり良い意味で変な作品だなと思いました。
あと中島歩がとにかく最高。彼が最高に活きる使い方で、キャスティングした人は分かってる。今作の癖強い演者の中では隠れがちだけど、地味に筧美和子もパブリックイメージにあっているような役回りでバッチリ。会話にハマれるかハマれないかが作品の評価に直結すると思うので確実に好き嫌いはあるが、個人的には好きでした。
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