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はじめから烙印を押されてのくりふのレビュー・感想・評価

はじめから烙印を押されて(2023年製作の映画)
3.5
【ホワイト・カーストの烙印】

Netflix新作ドキュメンタリー。私はお初でしたが、ロジャー・ロス・ウィリアムズという黒人監督は過去、よきドキュメンタリーを幾つも作っていたのですね。後回しにしていた『カサンドロ』にも、フィクションだが興味が湧いてきました。

邦題はぎこちないが直訳らしい。出演もしている歴史家イブラム・X・ケンディによる同名ノンフィクションから恐らく、映像化が効果的な部分を中心に、映画にしたのではと。

タイトル通り、黒人差別は初めが肝心だったというのが、本作イチのポイントかと。その烙印は現代でも消えていない。だから虐待の歴史を振り返り、現在の映像と並列させるのは効果的でした。…要は、変わってないってことだものね。

黒人奴隷を“発明”したのは15世紀のエンリケ航海王子で、黒人を“劣った獣”として“改宗させて魂を救った”と喧伝したそうな。あーまたかと思ったが、調べるとこの方、キリスト騎士団の団長だったんですね。ひっでえ暴力布教を当たり前にやるからね、あの手の方々は。

この初期布教で、白人カーストでの黒人は最下位、と定まってしまったわけだ。

やっぱり、神を信じている限り差別はなくならないでしょう。何故なら神と人との間に差別があるから。人道上ダメ。ゼッタイ。とわかっていても、未だインドからカーストの怨念が消えないことと、根は同じだと思います。

また、“大衆文化や権力は知らぬ間に私たちに思想を吹き込む”と語られるがその通りで、過去、映画が描いてきた欺瞞に触れていることも、映画の表現ならではでした。

『國民の創生』の外道ぶりは有名ですが、最近だと例えば、NASAを支えた黒人女性の伝記映画『ドリーム』。私は原作を読んでいたため、その史実改変に呆れてしまった。感想を、

>全般、差別描写はお子様ランチだった。“トイレ差別”を見せ場にしているところに、本作の安さが顕れている。

と記したのですが、その関連場面が本作では皮肉たっぷりに引用され、正直痛快でした。

他、差別と闘ってきた黒人女性の活動家を立たせたのは、吹けよ現代の風…ですね。中でもアイダ・B・ウェルズによる、白人による黒人リンチの実態を、取材を重ねてまとめたレポートは偉業だと思います。人でなしも、証拠を突きつけられれば逃げられないからね。

語りが未来の、反人種差別社会に至るとみるみる、映画は口ごもってしまいますが…一方、差別を始めたのは白人なのだから、お前らが何とかしろ!という主張もわかりますね。

本作はあくまで、黒人側からの主張ですが、耳を傾ける価値は十分にあるかと。“黒人は前進すると罰せられる”が、それでも本作に登場する人々は、歩みを止めないことでしょう。

<2023.11.26記>
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