ハル

ゴールド・ボーイのハルのレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
4.2
東京国際映画祭ではソールド・アウトしていてチケットが取れず、さらに前評判も良かったからとても気になっていた作品。
海辺で子供3人が撮った記念撮影、その背景にたまたま映っていた殺人現場。
お金と家庭の事情に苦しめられていた3人は決意する、犯人をゆする事を。
サイコパスVS少年団の悲しく狡猾な戦いが幕を開ける。

これは…スリラー、サスペンス系としては今年最高クラスの邦画じゃないかな?
緻密によく練られていて、129分ずっと没入鑑賞してしまった。
終始色味を抑えた暗めのトーン、古臭い昭和風味な絵も作風とガッツリ噛み合う。
沖縄が醸し出す不安定な空気感というのかな、ロケ地もピタッとハマるし、何から何まで良い。
「劇を楽しむためのシチュエーションはバッチリ整えました。あとはただ予測不能な心理戦をご覧あれ!」
そんな、意思を感じられる極上の“狂気”に酔いしれた。
チープさすらも“味”に思えてしまう、完成度の高さ。

役者陣も良き。
岡田将生の冷徹さと美しさの造形美、このサイコパスな役柄が超絶似合う。
さらに子役3人がそれを凌駕するかのように鬼気迫る感じで芝居を披露している。
原石の輝きを鮮烈に感じられて、強く強く心へ突き刺さった。
「モノが違うんだよ?」と言わんばかりの覚醒した桁違いのサイコパスの才能に震えさせられ、もう笑いが出てしまうほど。
隠し味的に抑えた役柄を演じている黒木華も効いていたし…やはり彼女はうまい。

東野圭吾や宮部みゆきなど、当時本屋のディスプレーを席巻していた心情描写の巧みな作家が好きな方々に是非見てほしい一作。
なんとも言えない気持ち悪さと先が気になるワクワクな雰囲気を感じられる映画です。
終わり方も含めてめちゃくちゃ好きな作品でした。
とりあえず、もっと上映規模を拡大して…
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