しの

回廊とデコイのしののレビュー・感想・評価

回廊とデコイ(2023年製作の映画)
3.0
小林賢太郎氏のクリエイティブが好きなので堪能した。タイトルが示すように、繰り返しとニセモノをゆるくテーマにしているが、これは言ってしまえば「小林賢太郎の脳内の開示そのものを天丼ネタにする」ということなのではと思う。おかしな着眼点を反復することで笑わせるのがうまい。そしてそれはニセモノ(演技やキャラクター、物語)を繰り返し見せることによって立ち現れる世界観ということでもある。

ただ正直、そういうテーマ設定にすると短編集としては何でもありになってしまうとは思う。なので正直、本作に映画として強固な体験があるかというとそうでもない。一個一個のネタが積み重なることによる化学反応もとくに感じず、順当に面白いネタの集合体という印象。舞台コント×小林賢太郎テレビだった。

短編集としての美点があるとすれば、演劇と映画とアニメーションを小林賢太郎的なおかしみとともに行き来する楽しさはあったと思う。ただ同時に、やっぱり舞台は舞台として観たいなと思ったりした。「そこ役者一人だけ抜いた切り返しで見たくない……」みたいなシーンがいくつか。次回はもっと映画の特性を活かしてほしい。
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