涼

青春18×2 君へと続く道の涼のレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.3
 藤井道人の脚色の巧さと清原果耶の演技力に感嘆する。本作が成功した主要因はこの二つであろう。

 原作は今から10年前に36歳の台湾人男性が青春18キップで日本各地を6日間旅行し、それを写真と共にブログに挙げたものである。タイトルもそれにちなんでいる。翻訳で読んだが、これはこれでなかなか良かった。初めての日本で一人旅をして、18年前の亜美との出会いを回想しつつ、本人を訪ねようとする。

 藤井はその骨子は変えずに、より劇的な要素を加えたわけだが、その加減が絶妙なのだ。
 例えば、原作では亜美は6歳上となっているが、本作では4歳上としている。男の方が背伸びしているにしても、この年齢差なら見る者にもまだ双方の恋愛感情を納得させやすいであろう。
 また、恋愛映画なのに冒頭、会社の代表を解任されるというショッキングなシーンから始まるというのもリアルな現実を感じさせて引き込まされる。

 アミ役の清原果耶の演技が素晴らしい。病を抱えているがそんなそぶりも見せず周囲に明るく振る舞う。その明るさの中にふと見せる陰りの演じ方が上手い。ジミーに対してお姉さん的な立場を維持しているが、映画を見た後手を握られた際の驚きとうれしさの入り交じった表情があまりに良い。この表情をどれだけの女優ができるだろうか?

 アミは明るくて温かい性格だとはわかるが、それを補完するものに絵がある。絵を描くのが好きで、旅先の風景を描くという、原作にはない設定なのだが、その絵が温かさを感じさせて実に良い。アミはこんな人柄なんだな、というのがわかる。伸びやかで生命力を感じさせるこの絵を見られただけで良かったと思った。そして、この絵はラストでも生きてくるのである。

 この絵の作者はよしだるみという絵本作家で、なんと藤井監督の3歳上のお姉さんだという。この絵は本作の成功に大いに貢献していると思う。小さい時、姉は弟に絵本を読み聞かせ、時々続きを創作して聞かせたという。藤井道人の脚本家としての原点は、ここにあったのではないだろうか?

 ジミー役のシュー・グァンハンは、イモっぽい感じでいい男過ぎないのが良かった。日本パートでは金髪の黒木華、松重豊、黒木瞳もいい味を出していた。

 これで藤井道人監督作品を見るのは7本目になる。順位を付けると、以下の通りである。

1 青の帰り道
2 青春18×2 君へと続く道
3 最後まで行く
4 余命10年
5 ヤクザと家族 The Family
6 新聞記者
7 デイアンドナイト

 
涼