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ナイトスイムのkuuのレビュー・感想・評価

ナイトスイム(2024年製作の映画)
3.7
『ナイトスイム』
原題 Night Swim
製作年 2024年。上映時間 98分。
映倫区分 G
憧れのプール付き物件に引っ越した一家を襲う恐怖を描いたホラー映画。
ワイアット・ラッセルがレイ、ケリー・コンドンが妻イブを演じた。
『ソウ』シリーズのジェームズ・ワンと『ゲット・アウト』のジェイソン・ブラムが『M3GAN ミーガン』に続いてタッグを組んで製作を手がけ、ブライス・マクガイア監督が2014年にロッド・ブラックハーストと共同で製作したショートフィルムをもとに自らのメガホンで長編映画化した。
短編を貼り付けときますが、叱られたらけします。Witchcraft Motion Picture Company presents NIGHT SWIM (horror short)


https://youtu.be/R5mPELbWVDk?si=iQCvbc1gNXxRN9CJ


難病に侵され早期引退を余儀なくされた元メジャーリーガーのレイ・ウォーラー。
現役復帰を目指す彼は自身の理学療法も兼ねて郊外のプール付き物件を中古で購入し、妻イブや思春期の娘イジー、幼い息子エリオットとともに引っ越してくる。
新たな生活を満喫する一家だったが、裏庭にあるプライベートプールは、なぜか15年も未使用のままだった。
そのプールには得体のしれない怪異が潜んでおり、一家を恐怖の底へと引きずり込んでいく。

この手のホラーの性質上、得体の知れないモンが出るプール・ホラー(確かにマイナーなサブジャンルやけど)はうまくいくはずがないと思てた。
登場人物が何回プールに入ったり出たりすりゃ、観てる側はうんざりするはず。
しかし、ブライス・マクガイア監督の長編デビュー作『ナイト・スイム』は、恐怖に満ちたセットピースのためのスマートなアイディアに溢れてたし、2014年の短編映画(ロッド・ブラックハーストと共同監督)をポップコーン・ジャンプスケアー映画として巧く長編映画化にしてると思いました。
郊外にある裏庭のプールという光景は、本質的に恐ろしいものではないけど、マクガイア監督と撮影監督のチャーリー・サロフ(『Smile』や『レリック』の撮影を担当)は、鮮明でスタイリッシュな、水を中心とした写真で恐怖の深みを作り出していた。
巧みなで効果的やった。
カメラが水面すれすれに浮かぶと、その下に何があるのか想像して身もだえしてしまう。
特に、プールが不気味な無限の海のように見える瞬間はそう。
今作品で最も制限の多いように見えるアリーナは、代わりに独創的なシークエンスの数々を生み出す遊び場となる。
深みでコインを集めるゲーム、潜在的な犠牲者でいっぱいのプール・パーティー、ホルモンが猛威を振るうマルコ・ポーロの間違ったラウンド、半透明のグールをからかう、頭を回転させながら前を這うPOVショット。
恐怖を着地させる真の鍵は、水の中に入っていく登場人物に確実に関心を持たせることやけど、マクガイア監督はそれも成功させている。
ウォラー一家は巧みに描かれており、特に父親レイ役のワイアット・ラッセルは巧みだった。
彼は、プールに足を踏み入れる前からすでに溺れているような男。
難病MS(多発性硬化症)の症状が悪化する一方で自分の将来がどうなるかを警戒し、本格的な家庭生活に落ち着く準備ができておらず、体がそうでないと云う一方で野球の新星としてのキャリアを続けたいと熱望している。また、ケリー・コンドンは、レイが水治療によって前進していることは否定できないが、プールで体験した得体の知れないモンの幻影との間で揺れ動く家長イヴを演じ、大きな共感を呼んでいる。
レイ、イヴ、そして彼らの子供であるイジー(アメリ・フォーファーレ)とエリオット(ギャビン・ウォーレン)がプールに入るたびに、思わず息を止めてしまう。
今作品は自信たっぷりに滑走するので、沈没しそうになる瞬間がより眩しく感じられる。  
得体の知れないモンが出る理由を説明するための終幕の寄り道は不要で、泥沼の神話と恐怖はプールのアクションには及ばない。
そして、家族の物語の強さは、誤った判断によるエンディングで台無しにされ、得も云われぬダークさへの振れ幅が苦い後味を残す。
今作品は、『IT』、『シャイニング』、『ジョーズ』、『ポルターガイスト』を意識しながらも、それ自体としてよく練られた、マクガイア監督の強力なデビュー作と云える。
ブラムハウスとジェームズ・ワンの製作会社アトミック・モンスターが、今後の共同製作に向けた準備を進める上でも、今作品は良い兆しを見せている。
スマートな恐怖演出、スタイリッシュなカメラワーク、力強いサウンドデザイン(水中の音、パニックになった水しぶき、神経を逆なでするような潜水板のガタガタ音)、魅力的なパフォーマンスで、巧みなホラー作品に仕上がっていた。
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