カタパルトスープレックス

あんのことのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

あんのこと(2023年製作の映画)
3.2
入江悠監督による社会派ドラマ作品です。

「SRサイタマノラッパー」シリーズは好きなのですが、その他の入江悠監督作品はイマイチな印象でした。今回は社会の底辺から抜けることの困難さを描いた作品で、テーマに惹かれて鑑賞。

主人公は21歳で麻薬と売春の常習犯の杏(河合優実)です。小学校4年から不登校で中学も卒業していない。漢字もあまり読めない。住まいは公団のゴミ屋敷。体の不自由な祖母とDVの母親の三人ぐらし。ここからかなりハードモード。

そして更生を手伝う刑事の多々羅保(佐藤二朗)と、多々羅を取材しているジャーナリストの桐野達樹(稲垣吾郎)。二人の手助けもあり、更生に向けて歩みだす杏だが……という話です。

まず、キャラクター造形は派手さはなく淡白な感じがむしろ好感を持てます。薄味のキャラクター造形は「SRサイタマノラッパー」シリーズにも通じます。薄味だけど、ちゃんとキャラは立ってる。特に河合優実です。死んだ魚のような目にだんだん命が宿ってくる。

キャラクター造形でカギを握っていたのは母親(河井青葉)だったと思います。そこも薄味だったのが残念。なぜ母親が杏をあそこまで支配できたのか。そこに説得力があまりなかった。支配する母親が強烈であれば、その支配から救う側の多々羅のキャラクター造形も更に引き立ったはず。

支配する側とそこから救う側の対比がうまくできていないため、ストーリーも薄味になってしまっています。鬱展開が苦手なボクも、普通にみれちゃいましたもの。