みっちぇる

あんのことのみっちぇるのネタバレレビュー・内容・結末

あんのこと(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

「見ててずっと辛かったが、見てよかったと思う」という評を見たため身構えてしまったが、半分当たって半分違った。

河合優実演じる杏はもがきながら逞しく生きていて、つらいこともあれば、パッと明るくなるようなこともある。つらい中でも楽しみを見出しながら人は生きていける強さがあることを感じて心が暖かくなる。一方で、その日常はあっという間に崩れ、危ういバランスの上に立っていたことがわかる。

彼女はなぜ死なないといけなかったのか。本人のせいでもあるし、多々羅のせいでも、桐野のせいでも、母親のせいでもあるし、それだけではない。まさに「積み上げたもの」だし、一瞬で崩れる様子が劇的だった。

コロナの時代の空気感を描写した映画としても出色なのではないか。
積み上げてきたものが急に失われる様子がさもドラマチックではなく淡々と描かれる。
たしかにコロナの頃はいろんなものが制限され失われたが、未知のウイルスへの恐怖と関心から失われたものへあまり注意を配れていなかったではないか。
その迂闊さ軽薄さを指摘されたような気持ちにもなる終盤だった。
みっちぇる

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