巴里得撤

無名の巴里得撤のレビュー・感想・評価

無名(2023年製作の映画)
3.8
時系列を歪ませた構成で、伏線が次第に回収されていくのは楽しいんだけど、カタルシスを感じたかと言うとそうでもない。

ちょっと複雑すぎたかも。

中国人キャストは美男美女揃いで、みんなおしゃれ。特に男性陣のスーツの着こなしにしびれる。

さらに言うと、スーツのテキスタイルやネクタイの柄で、どのシーンがどのシーンと接続しているのかわかるという仕組み。これはうまい。

鑑賞したのはトニー・レオン目当てだったけど、ワン・イーボーもむちゃくちゃよかった。監督は意図的に彼の狂気に焦点を絞ろうとしているけど、その本質は哀しみなのよね。

クライマックスは、トニーとイーボーくんの肉弾戦。すごいんだけど、物語を振り返るとなんだかなぁと思ってしまうのが残念。こういうとこがカタルシスを削ぐ。

この映画自体、中国共産党のプロパガンダだという評も見たけど、だったら殉死した女性に「労働者か知識人と結婚する」なんてセリフ言わせるかなぁ。中国共産党は文革で知識人を吊し上げたわけだし。

まぁ、よくも悪くもしょせんはエンタメなので、そんなに目くじらを立てることもないんじゃないか。

いまの中国で作られた映画なので、「抗日」がベースだけど、日本帝国の描写は穏当。もっとひでぇことやってるし、重慶無差別爆撃のシーンはカットされてるし。

あと、近衛文麿批判はおもしろかった。確かに言う通りだし、汪兆銘を担ぎ出したのは近衛なので、中国共産党から見れば、東條英機以上の極悪人なんだろう。
巴里得撤

巴里得撤