時系列を歪ませた構成で、伏線が次第に回収されていくのは楽しいんだけど、カタルシスを感じたかと言うとそうでもない。
ちょっと複雑すぎたかも。
中国人キャストは美男美女揃いで、みんなおしゃれ。特に男性陣のスーツの着こなしにしびれる。
さらに言うと、スーツのテキスタイルやネクタイの柄で、どのシーンがどのシーンと接続しているのかわかるという仕組み。これはうまい。
鑑賞したのはトニー・レオン目当てだったけど、ワン・イーボーもむちゃくちゃよかった。監督は意図的に彼の狂気に焦点を絞ろうとしているけど、その本質は哀しみなのよね。
クライマックスは、トニーとイーボーくんの肉弾戦。すごいんだけど、物語を振り返るとなんだかなぁと思ってしまうのが残念。こういうとこがカタルシスを削ぐ。
この映画自体、中国共産党のプロパガンダだという評も見たけど、だったら殉死した女性に「労働者か知識人と結婚する」なんてセリフ言わせるかなぁ。中国共産党は文革で知識人を吊し上げたわけだし。
まぁ、よくも悪くもしょせんはエンタメなので、そんなに目くじらを立てることもないんじゃないか。
いまの中国で作られた映画なので、「抗日」がベースだけど、日本帝国の描写は穏当。もっとひでぇことやってるし、重慶無差別爆撃のシーンはカットされてるし。
あと、近衛文麿批判はおもしろかった。確かに言う通りだし、汪兆銘を担ぎ出したのは近衛なので、中国共産党から見れば、東條英機以上の極悪人なんだろう。