ろく

その鼓動に耳をあてよのろくのレビュー・感想・評価

その鼓動に耳をあてよ(2023年製作の映画)
4.3
リアルコードブルーですよ。

体の調子が悪いなって時に行っても「よくわからない」と言われてしまい困っている50代です。だからかこんなお医者さん見るとおおって気になりますねえ。スペシャリストも大事だけどジェネラリストも大事だよねえとこの映画を観ながら思っていました。

また30代くらいの蜂矢医師がほんと恰好いいんですよ!この人ほんとにいるんだって思うとこの病院が近くにあったらと思います。実に飄々としながらも心がアツい!憎い!憎いね、あんた。惚れる人いっぱいいるじゃないですか。

そして「断らない」ってなかなか出来ることじゃないですよ。自分も二回ほど救急車で運ばれたことがありますが(一回は尿管結石、一回は呼吸停止)尿管結石の時は病院が神様に感じましたよ。だからこそ「こちら側」も正しくありたいなぁと思って見てました。いやこの映画でも他意はないんでしょうけど、ごねるおじいさんとか見たり結果お金払わなくてバックれたオッサン見るとそのまま他山の石ですよ。

でもこの映画はそれだけでは終わらないの。救急救命が大事なはずなんだけど医師がいない。就いても激務。若い医師はなかなかここで働こうとしない(当たり前ですよ。医師だって人間です)。ある意味、蜂矢医師のような人の「善意」によって成り立っているところがあるんですよね。だからそこにお金を、人員を使うのは賛成。十分な休みを、十分な給与を。それは医師だけでなく看護師など医療従事者に与えて欲しいと思ってます(でも現実は現場から離れた人が金も権力も持ってます)。何が悪いではないんです。患者側も医師側も、権力側も少し「歩み寄る」ことが大事ですよ。もうそうしないとどん詰まりになってしまう気もします。

最後蜂矢医師のもとで働いていた研修医が「救急救命を希望します」と会議で発言します。それを聞いた蜂矢医師が苦笑する。そう、二人ともそこが「荊の道」だとは分かっているんです。それでも彼らは、「人を助けたい」からそこを希望します。こんなことを対岸で見ていてはいけないなとしみじみ感じました。いい映画、というよりいいドキュメンタリーを観ました。あまり迷惑にならないように普段の生活を気を付けよう、そう思って映画館を出ました。健康のために少し運動して油ものは控えて。その日はなぜか野菜を沢山食べて帰りました。

※映画としては少し退屈なとこもあるんですけど、彼らにエールをこめてこの点数にします。「医は仁術」とはよくある言葉ですけど、本当にリスペクトします。

※自死した人にも文句もなく治療を施す彼らをすごいなと感じました。「糖尿が原因で心不全を起こした人と精神が原因で自死した人を分ける必要はない」と蜂矢医師は語ります。目の前の患者を差別しない彼らにやはりリスペクトです。
ろく

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