花火

義父養父の花火のネタバレレビュー・内容・結末

義父養父(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

どのカットもカメラ位置をしっかり考えているのだなという落ち着きと、それでいて全部計算づくですといった打算は伺えないのがとても好感。最初におっと思えたのは、夜の室内で横たわっている澁谷麻美の大写しにされた右腕が身体の反対側に動きドーナツを手にして口に持っていく、立ち上がり無人のギャラリーを歩いていく後ろ姿と僅かに差し込んだ外光がその背中を一瞬照らす、この画面づくりに目を見張った。あるいは暖簾越しに交わされる会話がある時途絶えて、言葉を投げかけた側が様子を見るため暖簾を上げるとその前を松田弘子が横切っていく彼女を見送ったカットのあと。質問に答えず炬燵で眠ってしまった有薗芳記の顔を写し出す画面の、昼間の明るさがみるみるうちに暗くなりさらに外から照らされる回転するライトの光を浴びる顔の、驚異的な持続に舌を巻く。澁谷が赤く染めたレースカーテンから差し込む光を背にしてウクレレを弾く松田、それを目にする澁谷と有薗が同じフレームに収まる画面に流れる穏やかさ。そして澁谷を拒絶した松田がそのカーテンを力任せに剥ぎ取るシーンの、赤い光に満ちた部屋が自然光の白さに戻る衝撃。
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