[ルーマニア、黄金に魅せられた人々の末路]　80点

傑作。ダン・ピツァ長編二作目、ミルチャ・ヴェロイユ長編三作目、コンビでは二作目。コンビ一作目『Stone Wedding』とも似たテーマを扱った二部構成の作品であるが、同作が"結婚"とそれにまつわるものがモチーフだったのに対して、今回は"葬式"とそれにまつわるものがモチーフとなる。第一部"ミルザ"では冒頭から銃殺刑で何人もの囚人が倒れていき、無情にも死体はトロッコに山積みにされて視界から消えていく。朽ちかけた鉱山城下町にやって来たミルザという青年は、他の男たちと同様、かつての金鉱ハンターたちが隠した金塊を見つけて金持ちになろうと考え、安酒場を営む女将に協力することになる。ヴェロイユらしい省略的な語り口とイオシフ・ダミアンの静謐で荘厳な映像美は前作の第一部と似ているが、流石に今回は省略しすぎて物語が追いきれなかった。ただ、ダミアンの映像美はそんな欠点を補って余りある。特に女将によって寂れた街に監禁される美しい娘の気怠げな監禁生活と目線が交差する、時間が止まったような奇跡的瞬間や、ミルザが二度目の財宝回収に向かい必然的な死を迎える際の緊迫感が静かに淡々と描かれている。第二部"胸"は黄金を持つという老人の遺産を期待して若い女が結婚するが…という話で、ここでもピツァは前作同様、全く楽しそうじゃない結婚式を、葬式の直後に描き出す。結婚に恨みでもあるのか。明らかに金目当てで結婚した女と金を狙われる男の駆け引きが、様々な環境下で繰り返され、それでも表面的な夫婦生活を続けなければいけないという異様な緊張感が画面を支配し続ける。それは、予期せぬ瞬間に一瞬だけ"通る"細いフレーム内フレームによって生まれる視線のやり取りや、キッチンの戸棚に平然と人形の頭部だけが鎮座していたり、服屋の軒先に少女の人形がまるで首吊死体のように吊るしてあったりという死のイメージの氾濫があるおかげだろう。イオシフ・ダミアンはその後映画監督に転身しつつ、撮影監督も続けていたが、どちらもあまり作品数には恵まれないまま今に至る。

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黄金の精霊
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石の結婚式と同じ二部構成の映画

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