こたつむり

マイノリティ・リポートのこたつむりのレビュー・感想・評価

マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)
3.5
スピルバーグ監督風味の時計仕掛けのオレンジ。
…と思ったら、その他にも色々な作品をオマージュとして仕込んでいるようです。僕は寡聞にしてよく知りませんが、鑑賞時に探してみても面白いかもしれませんね。

さて、本作品の感想ですがまとめることがなかなか難しいです。というのも、前半30分は上々の出来(最近の言い方だと神作!)であり、中盤から後半の90分は佳作であり、最後の20分が全てを台無しにしてしまった愚作というバランスで出来上がっているからです。いわゆる『始めチョロチョロ中パッパ』というやつですかね。あ。違いますか。

これは全て『ハリウッドご都合原理主義者』の陰謀だと思うのです。

序盤は素晴らしいのですよ。テーマを提示しつつ、世界観を描き、主人公の立ち位置も説明していく。しかしながら、説明的な描写に陥れずに観客の想像力へ喚起させる部分も残しておく。物語が流れていくテンポの良さはさすがスピルバーグ!と唸るほど。これは、なかなかアタリの映画ではないかしらん、なんて胸が高鳴るばかりなのです。

しかし、そこからが良くない。物語が起承転結の承に至ると普通のハリウッド風味の娯楽映画になってしまうのです。いや、娯楽映画を否定するわけではありません。ただ、序盤の鋭い切り口が途中で鈍化するのが勿体無いな、と思うだけです。ですので、このまま終われば秀作として語り継がれた作品だったでしょう。個人的には主人公の決断する場面。あれをクライマックスに捉えれば良かったと思います。

そして、もっと余韻を残す終わり方にも出来たのに、これまでの下敷きを全て台無しにしてしまった終盤20分。これこそが『ハリウッドご都合原理主義者』の陰謀。きっと、彼らは観客が頭を使うことを恐れたのです。余韻を残せば、色々と考えちゃいますからね。それを無理矢理にでもまとめれば思考停止しますから。

だから、僕たちは本作を観終えた後に思考停止してはいけないのです。
ああ、面白かった、で終わらしてはいけないのだと思います。
是非とも、楽しんだ後も思考の継続を。
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