こたつむり

ゴジラ-1.0のこたつむりのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
2.7
♪ I lose control
  とぎれた心 そっと風にさらわれて
  僕は天を仰ぐ

山崎貴監督の作品はCGがスゴいんです。
本作も戦後日本の焼け跡を見事に再現。継ぎ目を感じさせない作り込みは圧巻の一言です。考証も重ねたんでしょうね。細部にも違和感がありませんでした。

でも、それだけなんですよね。
よくできたジオラマ…それだけなんです。“汚し”表現もあるんですが“重み”がないんです。匂いも臭いも感じないから、作り物の範疇を脱していないんです。

それは、人間ドラマも同じ。
喜怒哀楽を描いても、過去の作品から引用したパターンを繰り返しているだけ。役者さんが“熱量”を込めても、土台が薄っぺらいから足元を焼き尽くして終わっちゃうんです。

例えば「栄養失調になるよ」の台詞。
ツヤツヤで可愛い赤ちゃんを映してから言われても説得力がありません。今のご時世、貧相な赤ん坊をキャスティングできるわけないですが、それならそれで工夫すれば良いのです。

あと、吉岡秀隆さんが熱く語る場面も。
元軍人さんが指揮系統を考えずに語りだすので違和感満載。上官に配慮する様子を入れるだけで違うと思うんですが、そういう配慮は無いんですよね。

たぶん、観客を消費者として捉えているんでしょう。「客は泣けば満足するんだ」くらいにしか思っていないんです。だから、気軽に「生きろ」なんて言えるんです。その言葉はもっと重く、そして揺蕩うものだと思うんですけどね。

まあ、そんなわけで。
巷の高評価に誘われて、苦手な山崎貴監督作品に臨みましたが…結果は玉砕。ゴジラが襲ってくる場面や、退治しようと苦心するところは良かったんですけどね。題材が『ゴジラ』なんだから、無理に語らなくても良かったのに。

最後に余談として。
本作の主人公の名前は「敷島」。
これを聴いた時点で…とても嫌な記憶が甦りました。そう、それは某巨人系実写映画。あれにも「シキシマ」と名乗る隊長が…。この名前は僕にとって鬼門なのかも。
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