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毒娘のarchのレビュー・感想・評価

毒娘(2024年製作の映画)
3.3
毒親、に対する形での毒娘。
過去に母親の放った火で火傷し不登校気味の萌花とまるで怪異のように存在するチーちゃん、その2人を指すタイトルなのだと思う。

最近流行りの真綿で首を絞めるような家父長制を発揮する夫
のやり口がエグい。結論ありきで話を展開して、結局夫の理想や願望を押し付けて「家族」という団体を形作っていく。コンプライアンスや配慮という建前だけが大きく発展して、その内に家父長制は全然健在という塩梅。『来る』の妻夫木を思い出したし、『スワロウ』や『ほつれる』に類似したテーマといえる。
子供を作るためにスケジュールや食べ物(多分サプリとか)を使って萩乃をコントロールしようとしている姿が描かれる訳だが、若干直接的すぎる気もした。つまら映画的には安直にも見える。特に「私の体は私のもの」という決別のセリフは、おっしゃる通りであることは間違いないが、それを台詞にするのは意義を感じつつ、やりすぎ感も否めない。
またチーちゃん達の強襲によって夫が死ぬために、主体的な家父長制からの脱出は描かれておらず、本作のチーちゃんを中心としたホラー展開との食い合わせの悪さは若干感じた。


ただそれを吹き飛ばすぐらいのチーちゃんと萌花の楽しそうな振る舞いは良い。理想化された"家族"みたいなものを壊すカウンターとしてのチーちゃん、それに魅入られて友達になっていく萌花、危うさも感じつつシスターフッドとして楽しく見れた。



チーちゃんのフィクションラインのぶれ方はかなり気になるところではあった。どの程度実態のあるものなのか、怪異なのか人間なのか。そこがかなり曖昧で気になる部分だった。
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