イトウモ

ゴースト・トロピックのイトウモのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
3.5
おもしろかった。

基本的には光(あと音と風)に一番興味のある作家だという印象を持った。

終電を逃したご婦人が、今にも閉店しそうな店、店を経由して家に帰る。
人工光であることよりも、光と闇のコントラストであることよりもこの「今にも消えそうな光」というのが主題なのだろう。

夫を亡くした女が、闇夜で死にかけているホームレスに慈悲をかけるところにこのモチーフが主題化されている。
もう一つ重要な「着脱」のモチーフが現れる。全ての光がやっと消え去ったわずかな時間にヒジャブを脱いだ彼女が髪を晒す。
あれは喪に服す仕草である、亡くなった男にだけ見せる女の顔であるのだろう。彼女が闇の中に消えていく男たちに慈悲をかけるのは道徳ではないということが明らかになるとき、これが非常にエロティックな映画に変わる。

最後の海岸はそのせいで彼岸のイメージに変わる。あそこで、なぜあんなに印象的に長くウェーブした髪がとりあげられるかこれで明白になるのだが、最後にあの若い女(娘?)の顔を映すべきではなかったと思う