みちゃまる

またヴィンセントは襲われるのみちゃまるのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

理不尽に襲われ続けるヴィンセントは自衛のため身体を鍛え、護身具を揃え、独りで過ごすようになる。ラストは一応ハッピーエンド?しかしながら問題が解決した訳ではなく、いつ何時、お互いに襲い襲われながらと恐怖を感じたまま生きるのは辛いだろう。

世の中は不条理に溢れている。初めは小さな争いでも、ことは次第に大きくなり、無秩序で混沌とした世界を創り出す。不条理なことから目を反らし続けられれば良いが、逃れられないと分かると、最後には目隠しをして見ないようにする。
現実世界でも戦争や紛争、テロなどが多発している。宗教や人種などの違いで、相手は理不尽に襲ってくる。そして自分たちを守るため、世界は軍拡の一途を辿っている。そして特殊な環境は人を変えてしまう。最初は加害者に対して思いやりがあったヴィンセントも、自衛のための暴力や殺人は正当化していくようになる。戦争やテロも自分たちの正義を正当化するための殺戮である。皮肉にもそれぞれが自衛のための行動を取った結果、待っているのは世界の崩壊だ。劇中の浄化槽の話も、そんな混沌とした世界の比喩だと感じた。浄化槽が壊れているから汚物もだだ漏れであり、直しても直しても、何度も壊れてしまう。
現実世界がたどり着く未来とは、この作品のように混沌と無秩序が広がった世界なのかもしれないと感じる。
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