デニロ

侍タイムスリッパーのデニロのレビュー・感想・評価

侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)
3.5
幕末の侍が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の如くタイムスリップして現代の京都に落っこちて来る。雷ってそんな力があるんだろうか。『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』では、現代の高校生が太平洋戦争敗戦間近の1945年に落っこちて行った。大昔、青春の重荷を背負い、テント泊で飯豊連峰を縦走したのですが、夏の夕闇、稜線上の山小屋のテント場でテントを張っていると何やらピリピリした感じ。小屋の人が、雷が来たら小屋に入ってもいいよ、と言ってくれたので、その時はそうしようと思っていると、不意に辺りが明るくなる。うわっ、来た、と思ってテントを開けると、目の前を横に走る稲妻。で、出られない、と竦んだけれど、テントに落雷する事故を知っているので何としても小屋に入らねばと意を決する。他の天場からもワラワラと飛び出してきたので、わたしもウィスキーを持って飛び出したのですが、またすぐ傍で横に走る稲妻。

気がついたら、♬現在・過去・未来 あの人に逢ったなら/わたしはいつまでも待ってると誰か伝えて/まるで喜劇じゃないの ひとりでいい気になって/冷めかけたあの人に 意地をはってたなんて♬(迷い道/作詞:渡辺真知子)、という青春の重荷はそのまんまだった。どこかに行きたかったのに!

というような話でもなく、勤王の志士も佐幕の志士も案外21世紀の日本国に順応してしまうという喜劇のような話だった。作者が観て欲しいところは別だと思うのだけれど、その部分の何処が凄いのかよく分かっていないのです。でも、舞台なんかで役者が切っ先の美しい弧を描く姿を見ると、その役者の腕前の凄みは分かるのですが。

そんな事より会津藩士高坂新左衛門/山口馬木也がチャキチャキと撮影現場で仕切る助監督の沙倉ゆうのに傍惚れしている姿が可笑しくて、いつコクるんだろう、とそこだけは武士の奥ゆかしさなんでしょうか。ある事件で沙倉ゆうのに引っ叩かれた高坂新左衛門に、いいムードじゃないか今だろ、と敵役の長州藩士風見恭一郎/冨家ノリマサに促されるようにして一歩住みだすと、彼女はいつもの助監督モードに戻ってしまっていて出鼻を挫かれる。そして、/今がその時ではない/とやせ我慢。おいおい、いつかいつかと言ってるとその時なんて永遠に来ないのだよ。
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