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侍タイムスリッパーのsingerのレビュー・感想・評価

侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)
3.5
こういう映画に出会うと、とても嬉しくなりますね。

有名な俳優さんが出演していたり、製作や宣伝に大幅に予算を割いているわけではないけど、その面白さが口コミで広がって行くような作品。
そんな作品に出会って、何も情報が無い中で、真っ新な気持ちで作品を楽しむのも、映画を観る醍醐味のひとつだなぁと、そんな事を改めて実感させてくれる作品でした。

「侍が現代の世界にタイムスリップしてきたら!?」

という、よくあるようなタイムスリップ物のような切り口から、
想像力豊かに繰り広げられる、ストーリー展開が本当に見事で、
導入からいきなり簡潔に物語に入って行けたし、
最後まで飽きる事なく、ずっと楽しめたし。
後半からクライマックスは、さらにグッと熱が入って、
緊張感のあまり、スクリーンに思わず釘付けになってしまうシーンも有り、
評判通りの、いい映画だったなぁと思いました。

侍が現代にタイムスリップするという事で、
まぁ、普通に考えたら想像出来るような、
そんなカルチャーショックの連続を、コミカルに描いたシーンもあって、
クスッと笑える要素もあったし、リアリティだとか、整合性だとか、
そういうのを考える隙を与えないくらいの、軽快な展開が心地良くもありましたね。

キャスト陣も知らない俳優さんばかりだったので、
キャラクターに先入観を入れる事なく、新鮮な気持ちで観れたのも良かったし、
敢えてステレオタイプな描き方をされた人物たちも、みんなどこか愛すべき所を持っていたのも印象的でした。

去年観た山口淳太監督の「リバー、流れないでよ」、
古くは、上田慎一郎監督の「カメラを止めるな!」のように、
ひとつのアイデアから、どんどん面白さが折り重なるような、
そんな映画を観ていると、映画にはまだまだ沢山の可能性や、
新しい表現が在るんだなぁと、そんな事を思わされてきたんですが、
今作でも同じような”新風”を感じられたのが、とても嬉しかったです。
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