Supernova

トラペジウムのSupernovaのレビュー・感想・評価

トラペジウム(2024年製作の映画)
2.1
ツイッターで話題になってたから便乗して鑑賞。

レイトだったせいもあるけど貸切だった。

主人公の悪い意味での唯我独尊っぷりが凄まじい。己の思うがままに他人を振り回す自己中。原作の小説がどういう具合で展開されていくのか知らないけど、これはアニメではなく実写でやるべきだったのではと個人的に思った。と同時にこれを実写でやってしまうと、クズ主人公というレッテルを貼られる女優が一人できてしまう事になるから難しいというのも理解できる。

ツイッターで見たけど、打算的以外の言葉が見つからない。グロテスクすぎる。

アイドルになるまでの過程が運任せであまりにも非現実的。最初の仲間集めパートは(正直納得いかない部分は多いけど)甘んじて受け入れるとして、テレビに出演する=アイドルになるチャンスとは直結しないって。
それは最悪まだ良いとして、偶然ワイドショーの小さな特集の画面の端っこにちょろっと写った素人高校生に、アイドルにならないか打診する制作会社とかフィクションとはいえリアリティがなさすぎる。何をどう考えたって話題性皆無だし、目算が検討違い甚だしい。テレビ局側は一体何を考えてたの?
せめて特集コーナーで映ったことで、そこからテレビでの露出を増やすために草の根活動に力を入れて、精力的な活動の末、どうにかテレビ局に気に入ってもらえてアイドルになる番組に呼んでもらう、とかならまだしも、あの状況から偶然アイドルをやる仕事が舞い込んできたってのは話がうますぎる。
そこら辺は尺の都合上仕方ないのかもしれないけど、ボランティア始めてから成功までがとんとん拍子すぎてもっと深掘りが欲しかった。
そこが本来一番難しいステップなんじゃないの?

しかも主人公は随分と計算高い(少なくともそう思わせるような描き方の)割に、周りが見えていなさすぎて、物語中盤でグループメンバーに対して粗暴な振る舞いを繰り返す行為がキャラ設定とかけ離れているのが明らかで、それゆえに終盤で己を見つめ直して反省する展開に繋げるための布石でしかないことが明白だから、もっと自然な流れを生み出せなかった原作者の創作技術の未熟さを感じた。
あまりにも安直でキャラクターの性格特性を無視した展開だったから、原作者には自分が作ったキャラに対する誠実さを見せて欲しかった。

ブチギレに関しては製作者の意図としては、主人公がアイドルになりたいという夢に対する執着が強すぎて視野が狭くなっていた、ってことでどうにか通したいのかもしれないけど、いくら狂人とて何をどう考えたって身内にあんな態度を取ることが人気アイドルへの近道とは到底考えないはずだから、計算高ければむしろ、心が折れかけているメンバーに甘い言葉をかけて引き止めると思う。
少なくとも、今まで散々世間体のいい面を見せるために努力してきたってのに、あんな行動を取れば何もかもパァになるのは明らかじゃん。現実のアイドルが不仲のせいでどーのこーのっていうのは良くある話だと思うけど、その設定をうまく活用できていない。とにかくグループに明確に亀裂が入る瞬間をなんでも良いから作り出したかったがために無理矢理入れた展開のように見えた。
あそこまで非理知的な行いができるのであれば、そもそも計算高くないと思うから、それゆえにキャラに矛盾が生じているように見える。
散々ボランティアを通して過去の活動の重要性であったり、人との接し方や印象が大事って話を刷り込んできたのに、あろうことかそこまで積み上げてきたものを全てぶち壊す展開をしていて、所詮は作品の「キャラ」でしかない立ち回りを創作者に強いられている駒なんだと思うと彼女たちに感情移入しているのがバカらしく思えてくる。
ブチギレたあとに謝罪して、グループの結束がより強くなるって展開が描きたいのかもしれないけど、全くその効果が発揮されていない。

そういう点から原作者かつアイドルである高山一実の計算高さの奥に潜む現実に対する認識の甘さが見えた気がして、色々とモヤモヤする。

製作者たちこの作品嫌いなんか?ってくらいどう考えても主人公にヘイトを向けるためだけに存在するシーンがいくつかあって度肝を抜かれた。それは明確に意図されているとはいえ、そこで溜まったヘイトを覆して物語が終わった頃には綺麗さっぱりスッキリした心で「この子を応援したくなった!」とはとても思えない。

現実はこんな醜いんだよってことを、フィクションというフィルターを通して伝えたかったのか知らないけど、そのメッセージとともに真逆のメッセージも受け取れるから、結局どういったメッセージを発信したいのかが曖昧なまま終わってしまった。なんだかんだで美談に落ち着いたのもそのモヤモヤに拍車をかけている。何もかもに納得がいかない。
せめて主人公には自分のキモいところを貫いて、あのボランティアの爺さんたちを切り捨てたみたいに、アイドルとして成功してからは結局3人とは疎遠になったって展開であって欲しかった。それで数年後、あの写真家くんの個展で偶然再会した、みたいな感じで終わってくれたらそれがキャラの行動原理的にも一番しっくり来た。最後の最後まで主人公に散々な仕打ちを受けてきたのに、その非情な振る舞いを赦して、最終的に4人で仲良しこよしのハッピーエンドなんて納得いかない。

とか散々語ってきたけど、結局主人公が一切の悪意なくこれが正しいと思い込んですべてのことを行なってきたのであれば、もう何を語ろうとそれが答えになってしまう。
いずれにせよ嫌いなキャラ。

あと主人公が自己中でうざい=作品の質が低いには直結しないから、それだけでこの映画がクソだって言ってる人の意見には同意しかねる。不快な感情にさせられたってのが、作品の評価に繋げられるってのが理不尽な行為であることを理解してない人が多い。
もちろん本作はそれ以外にも良くない点が多いから色々と言われているんだろうけど、作品評価とキャラクターに対する感情をしっかり切り離して鑑賞する努力が必要な人が多いと一連の議論を見ていて感じた。

不満だらけだけど、観れないほどつまらないものではない。ただ賛否あって然るべき作品。
僕は好きではないです。

殴り書き失礼しました。
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