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ブリックレイヤーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ブリックレイヤー(2023年製作の映画)
3.7
 グローバル資本主義さながらに、米国の諜報活動への抗議デモが広がるヨーロッパ。ギリシャのテッサロニキで反米を唱える女性記者が何者かに銃殺され、遺体で発見される。事件は米政府に批判的なジャーナリストを殺害することでCIAの仕業にみせかけ、世界を敵に回させようとしていた。事態を重く受け止めたCIAは捜査の末、容疑者としてある一人の男にたどり着く。男の名はヴィクター・ラデック(クリフトン・コリンズ・Jr)。1年半前に死亡したはずのCIA諜報員だった。捜査が手詰まりとなる中、米政府はかつてラデックの同僚でもあり、犯人追跡に特異な才能を見せていた元CIAエージェントのスティーヴ・ヴェイル(アーロン・エッカート)に協力を要請する。ニューヨークでレンガ職人として穏やかな生活を送っていたヴェイルは要請を一旦断るが、直後にラデックが送り込んできた刺客の襲撃を受ける。辛くもこれを退けたヴェイルは旧友との因縁に決着をつけることを誓い、再び捜査に身を投じていく。

 『ザ・ヘラクレス』の失敗はあったものの、かつて『ダイ・ハード2』や『クリフハンガー』や『ドリヴン』を撮ったフィンランドの職人監督であるレニー・ハーリンの新作がこのレベルの公開規模とは随分と悲しい。原作はFBI出身という異色の作家ポール・リンゼイがノア・ボイド名義で上梓した傑作サスペンス小説『脅迫』で、かつて親友であり相棒であったヴィクター・ラデックがCIAに裏切られたことで最愛の身重の妻と娘を失くし、たった一人で復讐を誓うという様な圧巻のスパイ・アクションである。アーロン・エッカート扮するスティーヴ・ヴェイルはマイルス・デイヴィス信者のレンガ職人というユニークな役柄で、何だか自慢の道具を使い、屋上のレンガをスクラップ&ビルドするのだがそこに追手の手が迫るという展開なのだが、シナリオは何やら『007』シリーズや『ミッション・インポッシブル』シリーズの三番煎じ感が凄い。然しながらB級アクションの手練れであるレニー・ハーリンのアクションはリズミカルで活劇性に富み、終始息つく暇がない。主人公ヴェイルの相棒となるまだ銃を撃ったことのない新米ケイト(ニーナ・ドブレフ)の存在が肝で、マンゴールドの『ナイト&デイ』の趣も感じるナイスなB級スパイ・サスペンスである。
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