叡福寺清子

シビル・ウォー アメリカ最後の日の叡福寺清子のネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

とにかく,南北戦争再来となったUSA.著名ジャーナリストのリー・スミスさんは大統領のインタビューを試みるべく同僚のジョエルさん,尊敬すべきサミーさん,そして子供顔のフォト・ジャーナリストのジェシーさんと共に一路北を目指すのですが・・・

まさかロード・ムービーとは思いませんでした.こんばんわ.三遊亭呼延灼です.
SNSの発達と拡散に伴い,経済格差,イデオロギー,セクシャリティーその他諸々の要素による分断が顕著化した現代社会.本作のようなUSAでの内戦が絵空事とは断言できませんし,政情が不安定な国家においてはより現実的なお話でございましょう.であれば,本作を描くにあたっての語り部が立場上重要な要素でございます.その点においては,ジャーナリストの使命が骨の髄まで刻まれていらっしゃるリーさんの目を通して,内戦を描くというのは当然の選択でして,間違っても『ナイト・クローラー』のルイス・ブルームさんには任せてはいけませんです.リーさんなら,御本人のイデオロギーを挟む事なく,記録者としての立場を崩してりはしませんでしょうから.その点,本邦の自称ジャーナリストさんも見習っていただきたいもんです.

行く先々で,様々な人と出会うジャーナリスト御一行.安心できるキャンプ地であったり,内戦なぞなかったかのように振る舞う町,狙撃兵と対峙する兵士,市街戦をくぐり抜けたと思ったら,牧歌的な風景に溶け込む差別主義者の民兵に囚えられる.まさに戦争があぶり出した様々な人間模様に,体力がどんどんと削られていきます.
風景といえば,本作で観られる風景はいずれもとても美しいです.特に車輌が森林火災を通り抜ける際にみられた映像は,『1917 命をかけた伝令』の夜戦に匹敵する美しさでした.

美しいといえば・・・なんですか,あの従軍ジャーナリストの眼鏡っ娘さん.えぇ,そうです.お持ち帰りしたいLVLですよ.喜んでブーツで踏まれます.中の人を調べましたら,ハウス・オブ・ドラゴンでレイラニに助言を与える元娼婦のミサリアさんじゃん.おじさんびっくりですよ.彼女観れただけで入場料の元を取れた気がいたします.

作品は大統領を射殺して西武勢力の勝利で幕を閉じます.つまり多様性を重んじる傾向が強い北軍が保守勢力が優勢な南軍に負けたわけで,そこんとこを突き詰めると面白い考察ができそうな気がします.もちろん,私はやりませんけどね.