たにたに

リアル・ペイン〜心の旅〜のたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

リアル・ペイン〜心の旅〜(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

★2025年12本目★

私たちは事実をただ機械的に受け取る現代社会に慣れてしまった。それが悪いということではない。しかし、実際に現地の人や空気感に触れ、そして感じ取ろうとすることで、"思いを馳せる"という身体的な痛みを伴って心に刺激を与えてくれるのも確かだ。

キーランカルキン演じるベンジーは、その"痛み"に繊細に反応する。観察眼に優れているけれど、時折り気持ちの整理がつかなくて混乱している態度を見せる。
周りの人から見ると変わった人物だと思われても仕方ない。しかし、このポーランドツアーに共に参加する全員が彼の言葉を真剣に聞こうとしてくれている。非常に心地の良い出会いだと感じた。
この周りを巻き込んでいく感じが、規模は小さいものの、スピルバーグの「ターミナル」のトムハンクスを連想させます。


その中で、日々仕事や家庭に忙殺されているディビット(ジェシー・アイゼンバーグ)はまるで自分を見ているかのようだった。ベンジーのように本音を吐き出す勇気もないし、そんなことしたらそれこそ変人だと思われないかと気にしてしまう。でも、いとこのベンジーは周りを照らす太陽のように輝いていて、嫌でもリスペクトしてしまう気持ちが湧いてくる。そんな観察眼に優れたいとこが、「お前は人と話すのが苦手だ」と単刀直入にぶつけてくるなかで、「真っ直ぐな足の指が好きだ」と以外な特徴を褒めてくる。これによって、ディビットが足の指を見るたびにベンジーに対する嫉妬とリスペクトが混ざった嫌悪感みたいなものを思い出すシーンがあって、まさにこれこそが"リアルな痛み"だなと思った。
何かを見て、何かを想起する。
なんならベンジーはこの痛みをずっと抱えて生きているんだなと。

ロードムービーならではの心の機微を描写する良い映画だなと感じました。
旅の魅力にも気づいた作品でした。
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