よっしー

リアル・ペイン〜心の旅〜のよっしーのネタバレレビュー・内容・結末

リアル・ペイン〜心の旅〜(2024年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「リアル・ペイン〜心の旅〜」

祖母の死をきっかけに彼女の祖国であるポーランドを訪れ、ホロコーストに関わる場所を巡るツアーに参加した従兄弟の物語。心に脆さを持つ、2人が紆余曲折ありながらも旅を完遂させる道のりを描く。ポーランドの街並み、ホロコーストの痕跡を、ピアノの優しい伴奏と共に巡るツアーに我々も参加することとなる。キーラン・カルキン演じるベンジーはムードメイカーではあるものの、少々変わった人物でもあり、時々場に緊張感を走らせる。

初日はすごく楽しそうにしていたベンジーだが、2日目から急に不機嫌な顔つきになり、列車で問題を起こす。このシーンでキーランが本年度アカデミー賞にノミネートされた理由を完全に理解した。映画では、まだそこまでの活躍を見せていなかったが、ドラマ「メディア王」での演技は確かなもので、壊れやすい人間を演じることに関してはピカイチの俳優である。もうマコーレ・カルキンの兄弟と認知する時代は終わりだろう。

ベンジーが自殺を図ったという設定が出てきたところで「やはりな」とは思ったのだが、彼が追い詰められている理由ははっきりとは提示されない。それはまたアイゼンバーグが演じるデヴィッドも同様に。ツアーに参加した人々も何かしらの悩みや傷を背負っており、心の痛みは病的なものではなく、誰にでも起こりうる全人的なものであるということが言いたかったのかもしれない。

強制収容所のシーンでは、伴奏もなく、厳かな雰囲気に包まれていた。このシーンは「関心領域」のラストの現実パートのような雰囲気があって好きだった。そこで亡くなった人たちと同じルーツを持つベンジーが帰りのバスの中で号泣するシーンも良かった。「関心領域」の現代パートと、奇しくもこの後に鑑賞した「ブルータリスト」に想いを馳せながらこの感想を記している。

「凄く好き」というわけではなかったが、上映時間も短く、笑えて、温かい気持ちになれる良い作品だった。キーランにはこれからも活躍して欲しいと思うし、最近あまり観ていなかったアイゼンバーグの演技と監督(彼の監督作品を観るのはおそらく初)が観られて良かった。そして久しぶりに食べたTOHOシネマズのポップコーンが美味かった。
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