「エミリア・ペレス」
第97回アカデミー賞にて作品賞含む13部門にノミネートされている作品。元々NETFLIX作品のようで、海外では日本語字幕付きで配信されている。
メキシコの麻薬カルテルのボスであるマニタスが弁護士を通して、性別適合手術を受け、女性エミリア・ペレスとして新たな人生を送るという作品。アイデンティティと家族との間を揺れ動く様をミュージカル仕立てにしており、非常に興味深い内容となっている。
フランスのイメージが強いオーディアールとハリウッド大作のイメージが強いサルダナがタックを組んで、メキシコで映画を撮るということに疑問が湧いたのだが、作風自体が奇抜だったので、最終的にそこは気にならなかった。
「家族を捨ててでも女性になりたい」という思想にとある芸能人を想起せずにはいられなかったし、結局数年後に家族の元に他人として戻るというのも、すごく身勝手な行為にしか思えなかったが、不思議とエミリアを嫌いにはなれなかった。
作中、エミリアは過去に自分がしてきたことへの贖罪を込めて、謎の失踪を遂げた人々の遺体を家族の元に帰す活動を始めるのだが、人を傷つけるより、人を幸せにすることの方に喜びを見出したエミリアの姿が素敵だった。
結局ミュージカルにした意味はよくわからなかったが、そのおかげでカラックスの「アネット」のような不気味さがある作品だった。オーディアールの常に新しいものに挑戦しようとする意欲に乾杯。