千年女優

ザ・キッチンの千年女優のレビュー・感想・評価

ザ・キッチン(2023年製作の映画)
3.5
公営住宅が撤廃されるも立ち退きを拒否する市民が社会問題化した近未来のイギリス。ロンドンの不法住居エリア「ザ・キッチン」の住民で、貧困層向けの葬儀会社で働きながら転居のための資金を貯めるイジー。知り合いもなく黙々と生活を送る彼が亡くなった元恋人の息子と出逢ったことで起こる心境の変化を描いたディストピア映画です。

イギリスでのキャリアを経てジョーダン・ピール監督作『ゲット・アウト』主演で世界的な知名度を得たダニエル・カルーヤがキブウェ・タバレスとの共同監督で製作した作品で、ロンドン映画祭で上映されると批評家から現実の問題に扱ったことが評価されるもNetflix配信後はSFとしてのスケールを求める視聴者からの評価は伸び悩みました。

サッチャー時代に制定された公営住宅賃貸権自由化で家賃高騰が進みホームレスが増えるイギリスの世情を描く作品で、安易に「事件」に頼ることなく現実感を重視することで真摯な姿勢を証明します。それ故に劇映画としての抑揚は乏しいですが、十分でなくとも主題のSFとしての落とし込みに挑戦して腰の据わった物語を展開する一作です。
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