三谷幸喜らしいコメディであり、テーマとして日本社会における男女の不平等さや結婚が個人に強いる姿などの社会性のあるイシューが盛り込まれている。
しかし、その不自由な社会からの精神的な逃避先がフィンランドというのが最後まで理解できなかった。リアルな逃避先としてフィンランドに移住するような話ではなく、この作品では、外交官であった父の思い出や、スオミというフィンランド語における自国を呼称という記号で、個人の生き様の理想的な象徴として、フィンランドが対象として描かれている。主人公の名前がスオミと設定されていることがそれを端的に表している。
個人の人生観の理想像として国が据えられるのも違和感があるし、そもそも国というものは単純ではなく、ある側面では別の国より優れているが、他の側面では劣っているなど、様々な要素が入り混じる複雑な全体性を持つものであるのに、一側面だけに目を当て、それを理想とするのはあまりにも安易すぎる設定だと思う。
フィンランドという設定がなくても物語として何の欠如もなく成立すると思うのに疑問である。